外国人を雇用する際、人材紹介会社、コンサルタント、知人、同業者、いわゆるブローカーなどから外国人材を紹介されるケースがあります。外国人材の紹介を受けること自体が、直ちに問題になるわけではありません。
先日、当事務所にも、お客様から「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人を雇用したいというご相談がありました。採用経路を確認したところ、いわゆるブローカーからの紹介であることが分かりました。
さらに、本人の国籍、学歴、職歴、日本語能力、これまでの勤務内容を確認したところ、現在の在留資格や採用後に予定している業務内容との関係について、慎重な確認が必要なケースでした。
しかし、紹介された外国人の在留資格、学歴、職歴、日本語能力、これまでの勤務内容、そして自社で従事させる予定の業務内容に不自然な点がある場合は、慎重に確認する必要があります。
特に、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持っている外国人であっても、その方が自社で予定している業務に当然に従事できるとは限りません。
在留カードに「技術・人文知識・国際業務」と記載されている場合でも、実際の業務内容が在留資格の範囲内であるか、本人の学歴・職歴と業務内容に関連性があるかを確認する必要があります。
本記事では、ブローカーから外国人材の紹介を受ける場合の注意点、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で採用する際の確認事項、企業側が不法就労リスクを避けるために確認すべきポイントについて解説します。
ブローカーからの人材紹介とは
外国人雇用の現場では、「外国人を紹介できます」「この人はすぐに働けます」「就労ビザを持っています」といった形で、企業に外国人材を紹介する人が関与することがあります。
このような紹介者は、人材紹介会社である場合もあれば、コンサルタント、登録支援機関、監理団体、同業者、知人、外国人コミュニティの関係者など、さまざまです。
一般的に「ブローカー」と呼ばれることもありますが、その内容は一様ではありません。
正式な許可を受けて人材紹介を行っている事業者もいれば、許可の有無が不明なまま、外国人材を企業に紹介しているケースもあります。
そのため、外国人材の紹介を受ける場合は、まず「誰から紹介を受けているのか」「その紹介者はどのような立場なのか」「報酬や手数料は発生しているのか」を確認することが重要です。
紹介を受けること自体が直ちに違法とは限りません
ブローカーや紹介者から外国人材を紹介されたからといって、それだけで直ちに違法になるわけではありません。
問題となるのは、紹介者が無許可で職業紹介を行っている場合、虚偽の経歴や学歴を前提に紹介している場合、在留資格上従事できない業務に就かせようとしている場合、本人から高額な手数料を徴収している場合などです。
また、企業側が「紹介者が大丈夫と言っていたから」と信じて採用したとしても、それだけで企業側の確認責任がなくなるわけではありません。
外国人を雇用する企業は、自社で従事させる業務が在留資格の範囲内であるか、在留カードが有効であるか、在留期限が切れていないかを確認する必要があります。
職業紹介事業の許可の有無を確認する
求人者と求職者の間に入り、雇用関係の成立をあっせんする行為を事業として行う場合、職業紹介事業に該当する可能性があります。
有料職業紹介事業は許可制とされており、厚生労働省も、有料職業紹介事業については許可制であることを示しています。
そのため、外国人材の紹介を受ける場合は、紹介者が職業紹介事業の許可を受けているかを確認することが重要です。
確認すべき事項としては、次のようなものがあります。
- 職業紹介事業の許可番号
- 正式な会社名
- 所在地
- 担当者名
- 契約書の有無
- 紹介手数料の金額
- 手数料を誰が負担するのか
- 本人から金銭を徴収していないか
- 紹介後のサポート内容
特に、紹介者が許可番号を示さない場合、契約書を作成しない場合、紹介料の流れが不透明な場合は注意が必要です。
技人国を持っていても安心できない理由
在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持っている外国人であっても、その方がどの会社でも、どのような業務でも自由に働けるわけではありません。
技術・人文知識・国際業務は、日本の会社等との契約に基づき、自然科学又は人文科学の分野に属する技術・知識を必要とする業務、又は外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に従事するための在留資格です。
つまり、在留カードに「技術・人文知識・国際業務」と記載されていても、実際に従事する業務が専門的業務に該当する必要があります。
例えば、次のような業務を主たる業務とする場合は、技術・人文知識・国際業務に該当しにくいと考えられます。
- 工場ラインでの単純作業
- 倉庫内での仕分け作業
- 商品の梱包作業
- 清掃業務
- 飲食店での配膳のみ
- 建設現場での作業員業務
- 介護施設での身体介護業務
- ホテルでのベッドメイキングのみ
一方で、IT、設計、通訳・翻訳、貿易、海外営業、マーケティング、外国人顧客対応など、専門知識や語学力を必要とする業務であれば、技術・人文知識・国際業務に該当する可能性があります。
重要なのは、職種名ではなく、実際の業務内容です。
在留カードだけで判断してはいけません
外国人を採用する際、在留カードの確認は非常に重要です。しかし、在留カードに「技術・人文知識・国際業務」と記載されていることだけで、採用してよいと判断するのは危険です。
確認すべきポイントは、在留資格名だけではありません。
在留期間が切れていないか、在留カードが有効か、本人とカードの顔写真が一致しているか、在留カード番号が失効していないかを確認する必要があります。
出入国在留管理庁は、在留カード等読取アプリケーションや失効情報照会を提供しており、偽変造在留カード対策として、在留カードの有効性確認を行うことができます。
近年は、偽造在留カードの券面が精巧化しているため、目視だけで判断することは危険です。
採用時には、在留カードの原本を確認し、必要に応じて在留カード等読取アプリケーションや失効情報照会を利用することが重要です。
採用前に確認すべき本人情報
ブローカーや紹介者から外国人材を紹介された場合でも、企業は本人と直接面談し、必要な情報を確認する必要があります。
主に確認すべき事項は、次のとおりです。
- 国籍
- 在留資格
- 在留期間
- 現在の勤務先
- これまでの職歴
- 最終学歴
- 専攻内容
- 卒業証明書や成績証明書の有無
- 日本語能力
- 現在の業務内容
- 転職理由
- 希望する業務内容
- 紹介者との関係
- 紹介者に金銭を支払っていないか
特に、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で採用する場合は、本人の学歴・職歴と、自社で予定している業務内容の関連性が重要です。
学歴や職歴と予定業務との関連性が弱い場合、または本人の説明と紹介者の説明が食い違う場合は、慎重に確認する必要があります。
紹介者に確認すべきこと
外国人材を紹介してきた紹介者に対しても、必要な確認を行うべきです。
特に、次の点は確認しておくことをおすすめします。
- 正式な会社名
- 職業紹介事業の許可番号
- 契約書の有無
- 紹介手数料の金額
- 本人から手数料を取っていないか
- 本人の学歴・職歴をどのように確認したか
- 在留資格の確認をどのように行ったか
- 紹介後の責任範囲
- 不許可や採用取消しの場合の対応
- 本人との関係性
紹介者が「ビザは大丈夫です」「技人国を持っているので問題ありません」と説明するだけで、具体的な根拠を示さない場合は注意が必要です。
在留資格の可否は、紹介者の説明だけで判断するものではありません。
企業自身が、本人の在留資格と自社の業務内容を確認する必要があります。
注意すべきブローカーの特徴
次のような紹介者には注意が必要です。
- 職業紹介事業の許可番号を示さない
- 契約書を作成しない
- 本人と直接面談させない
- 本人の学歴や職歴の説明が曖昧
- 在留カードのコピーだけで採用を進めようとする
- 「ビザは絶対大丈夫」と断言する
- 紹介料の支払い方法が不透明
- 本人からも手数料を取っている可能性がある
- 在留資格と関係のない業務に就かせようとする
- 履歴書の内容が不自然
- 本人の日本語能力と職務内容が合っていない
- 質問すると回答を避ける
特に、「技人国を持っているから、どんな仕事でもできる」という説明は誤りです。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、専門的知識や外国文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に従事するための在留資格であり、単純作業を主たる業務とすることはできません。
企業側にも確認義務があります
外国人を雇用する企業は、紹介者任せにするのではなく、自社で確認すべき事項を確認する必要があります。
厚生労働省は、外国人を雇用する事業主について、外国人の雇入れ・離職の際に、氏名、在留資格などを確認し、ハローワークへ届け出ることが義務づけられているとしています。
また、外国人雇用管理指針では、事業主は外国人労働者についても労働関係法令や社会保険関係法令を遵守し、在留資格の範囲内で適正な労働条件等を確保することが求められています。
つまり、紹介者から紹介を受けた場合でも、企業側は在留資格の確認、業務内容の確認、労働条件の整備、外国人雇用状況の届出などを適切に行う必要があります。
「紹介者が大丈夫と言ったから」という理由だけでは、企業側の責任を免れることはできません。
不法就労助長罪に注意
外国人を雇用する際に最も注意すべきリスクの一つが、不法就労助長罪です。
不法就労助長罪は、事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた場合などに問題となります。
入管法では、不法就労助長罪について、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金などが定められています。
例えば、次のようなケースは注意が必要です。
- 在留資格の範囲外の業務に従事させた
- 在留期限が切れている外国人を雇用した
- 就労できない在留資格の外国人を働かせた
- 資格外活動許可の範囲を超えて働かせた
- 偽造在留カードを確認せずに採用した
- 実際には単純作業なのに技人国として採用した
外国人本人だけでなく、雇用した企業側も責任を問われる可能性があります。
外国人を雇用する場合は、在留資格、在留期間、業務内容、就労可否を必ず確認する必要があります。
採用前の実務チェックポイント
ブローカーや紹介者から外国人材の紹介を受けた場合は、次の流れで確認することをおすすめします。
まず、紹介者の会社名、担当者名、職業紹介事業の許可番号、紹介手数料、本人からの徴収の有無を確認します。
次に、外国人本人と直接面談し、在留資格、在留期間、現在の勤務先、職歴、学歴、日本語能力、転職理由を確認します。
そのうえで、自社で予定している業務内容が、在留資格「技術・人文知識・国際業務」に該当するかを確認します。
さらに、在留カードの原本確認、在留カード等読取アプリケーションによる確認、失効情報照会、卒業証明書や成績証明書の確認、雇用契約書や労働条件通知書の作成を行います。
転職により勤務先が変わる場合や、業務内容に不安がある場合は、就労資格証明書交付申請を検討することも重要です。
就労資格証明書は、転職後の業務が現在の在留資格で行えるかを事前に確認するために活用されることがあります。
採用前に確認を怠ると、後から在留資格上の問題が発覚し、雇用継続が難しくなる可能性があります。
当事務所のサポート
当事務所では、外国人雇用に関する在留資格の確認、技術・人文知識・国際業務の該当性確認、就労資格証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請に関するご相談に対応しております。
ブローカーや紹介者から外国人材の紹介を受けた場合でも、採用前に在留資格上の問題がないか確認することが重要です。
当事務所では、本人の学歴・職歴、現在の在留資格、自社で予定している業務内容、雇用契約の内容を確認したうえで、在留資格上のリスクを整理いたします。
例えば、次のようなご相談が可能です。
ブローカーから紹介された外国人を採用してよいか確認したい
技人国を持っている外国人を採用できるか確認したい
現在の在留資格で自社の業務に従事できるか確認したい
学歴と業務内容の関連性を確認したい
就労資格証明書を取得したい
在留カードの確認方法を知りたい
外国人雇用のリスクを事前に確認したい
紹介者からの説明に不安がある
外国人雇用では、「紹介されたから大丈夫」「在留カードがあるから大丈夫」と安易に判断することは危険です。
特に、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で採用する場合は、在留カードの記載だけでなく、実際の業務内容、本人の学歴・職歴、雇用契約、会社側の受入体制を総合的に確認する必要があります。
ブローカーや紹介者から外国人材の紹介を受けた場合は、採用前に専門家へご相談ください。

