実地指導や監査にどのように対応すればよいかと、悩んでいる福祉サービス事業所は多いでしょう。障害者総合支援法・児童福祉法における実地指導や監査は避けられませんが、詳しく理解していない事業所もいるかもしれません。実地指導や監査に正しく対応できないと指定の取り消しや効力停止になり、事業所運営どころか会社運営すら危うくなってしまいます。本記事では、障害者総合支援法・児童福祉法における実地指導・監査について、概要から対策まで解説します。

実地指導・監査とは

まずは、実地指導と監査の概要や実施主体などについて解説します。

実地指導とは

実地指導とは、障害者総合支援法・児童福祉法における福祉サービス事業所に対して、その事業所を管轄している行政が行う行政指導です。名称のとおり事業所の「実地」で行う指導です。

実地指導と類似した用語に集団指導があります。集団指導とは、実地指導と同じように福祉サービス事業所が対象ですが、事業所の関係者を一か所に集めて「集団」で行う指導です。実地指導と集団指導の違いは、行うのが「実地」か「集団」かの違いです。

「指導」と聞くと「運営指導」という用語が頭に浮かぶ事業所関係者がいるかもしれません。運営指導は障害者総合支援法や児童福祉法ではなく介護保険法での用語です。介護保険法においても実地指導という名称が以前は使われていました。しかし、オンラインによる指導も行われるようになり、指導が必ずしも実地ではなくなったため、運営指導という名称になりました。

監査とは

監査とは、福祉サービス事業所の違反を確認する調査で、事実関係の的確な把握と公正・適切な措置の2点に重きを置いて行われます。一般的に[1] 監査のみが行われることはなく、行われるのは実地指導で違反の疑いがあった場合のみです。また、監査によって違反が確定すると行政処分がくだされます。実地指導から監査への流れや行政処分については後ほど詳しく解説します。

実地指導・監査の実施主体は

障害者総合支援法・児童福祉法における福祉サービス事業所への実地指導と監査を行うのは、国ではなく都道府県や区市町村です。実地指導や監査は、自治体が単独で行う場合と都道府県と区市町村が合同で行う場合があります。なお、すべての区市町村が実地指導や監査を行うのではなく、指定都市と中核市に限られます。

移動支援事業の実地指導・監査

実地指導や監査は、移動支援事業を行っている福祉サービス事業所に対しても行われます。移動支援事業とは、屋外での移動が難しい障害のある方に対して提供する外出のための支援事業です。地域で生活する障害者・障害児にとって必要不可欠な福祉サービスと言えます。移動支援事業は、障害者総合支援法の地域生活支援事業の区市町村事業に属するため、区市町村が実地指導や監査を行います。

実地指導から監査までの流れ

ここまで概要について解説してきましたが、実地指導や監査に対応するためには全体の流れを把握する必要があります。ここからは、実地指導から監査までの流れについて解説します。

違反の疑いがあると実地指導から監査へ切り替わる

実地指導で違反の疑いが確認された場合に、ただちに実地指導から監査に切り替わります。違反の疑いとは以下のような内容です。

  • サービスの内容の不正・不当
  • 報酬の不正請求
  • 基準(人員基準・設備基準等)の重大な違反
  • 実地指導の拒否

このため、違反の疑いがなければ実地指導から監査への切り替え、つまり、監査が行われることはありません。なお、実地指導による指摘事項に対して事業所が改善しない場合も監査が行われます。

監査によって指定の取消・効力停止もある

監査によって事業所の違反が確認されたときは、基準を順守するように求める「勧告」や、勧告内容に対応しなかった場合の「命令」などが、監査を実施した自治体から出されます。

ただ、福祉サービス事業所にとって、勧告や命令よりも事業所の運営に大きく影響するのは「指定の取り消し」や「効力の停止」です。指定の取り消しや効力の停止は、前節で取り上げたような違反の疑いが事実であった場合に行われます。指定の取り消しは文字通り事業の指定の取り消しであり、事業の継続ができません。

一方、効力の停止には以下のように「全部」と「一部」があります。

  • 全部の効力停止:一定期間、福祉サービスを提供できなくなる
  • 一部の効力停止:一定期間、福祉サービスの一部の効力が停止になる。新規の受け入れ停止など

指定の取り消し・効力停止は、事業所の運営に大きなダメージを与えるだけではなく、運営会社の倒産に繋がることがあります。このため、日頃からコンプライアンスを意識した事業所運営が重要です。

障害者総合支援法・児童福祉法の実地指導・監査の対策 とは

前章でコンプライアンスに触れましたが、障害者総合支援法・児童福祉法は複雑であり、気づかずに法令を違反していることがあるかもしれません。また、実地指導・監査を意識し、客観的視点で法令違反と疑われるようなことを無くす必要もあります。最後はコンプライアンスや実地指導・監査の対策について解説します。

内部監査で問題点をあぶり出す

対策の一つ目は内部監査です。内部監査は文字通り法人内で行う監査で、方法として以下の二つが考えられます。

  • 事業所内監査:事業所内の担当外の職員が監査員になって監査を行う
  • 事業所間監査:法人内の他の事業所の職員が監査員になって監査を行う

担当外の職員が内部監査をすることで客観的な視点で間違いがないか、疑われるようなことがないかを確認できます。ただ、人手不足や社会状況の変化への対応で、法人内に内部監査をする余裕がない法人もあるでしょう。法人内で余裕がない場合は、次節で紹介する障害・児童福祉専門のコンサルティング会社の活用があります。

コンサルティング会社を活用する

対策の二つ目はコンサルティング会社の活用です。コンサルティング会社の活用は、以下のように障害者総合支援法・児童福祉法における福祉サービスの運営の助言や指導、部分的な外部委託です。

  • 実地指導・監査対応の助言・指導
  • 国保連への請求業務・区市町村への移動支援事業の請求
  • 報酬の加算申請
  • 管理者・サービス管理責任者変更届の作成業務
  • 給与計算・経理業務

上記のような業務をコンサルティング会社の活用によって、事業所は利用者の支援に集中できる体制を構築できます。コンサルティング会社を活用している障害者総合支援法・児童福祉法の福祉サービス事業所が意外と多いことも事実です。確かにコンサルティング会社を活用すると費用がかかります。ただ、コンサルティング会社を活用することで、以下のような多くのメリットがあります。

  • 指定の取消・効力停止のリスクを軽減できる
  • コア業務に集中できる
  • 担当職員の採用・教育の必要がなくなる
  • 費用削減の効果も期待できる

上記のようなメリットが期待でき、事業所運営にとってプラスの効果が大きいのです。安定した事業所運営を目指すならコンサルティング会社の活用を検討しましょう。

実地指導・監査の対策を行い安定した施設・事業所運営を行う

障害者総合支援法・児童福祉法における実地指導は事業所の実地で行われ、監査は違反の疑いがある場合に行われます。実地指導や監査を実施するのは福祉サービスを管轄している都道府県や区市町村で、市町村事業に該当する移動支援事業の実地指導や監査を行うのは区市町村です。監査が行われるのは一般的には実地指導で違反の疑いが確認されたときです。もし、違反が障害者総合支援法・児童福祉法で指定する内容であったら、「指定の取り消し」や「効力の停止」となり、会社の運営に大きく影響します。障害者総合支援法・児童福祉法のコンプライアンスや実地指導・監査の対策としては、内部監査やコンサルティング会社の活用があります。内部監査をする余裕がない会社は、費用が発生しますがコンサルティング会社を活用して、安定した事業所運営を目指すことが重要です。

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コンサルティング業務

この記事の監修者 
特定行政書士 宗方 健宏

行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。障害福祉事業所と医療法人は、設立~運営までサポートしております。障害福祉事業所は、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。