福祉業界において外国人の雇用が増えている背景には、さまざまな要因があります。例えば、人口減少や少子高齢化により、福祉サービスの需要は急速に拡大しています。しかし、国内労働力の供給が限られているため、外国人労働者の活用が不可欠となっているのが最大の理由といえるでしょう。

本記事では、福祉業界における外国人雇用の背景や、やメリット・デメリット、福祉業界で外国人を雇用するための4つの制度について解説します。福祉業界で外国人雇用を検討中の方の参考になれば幸いです。

福祉業界における外国人雇用の背景

福祉業界では、外国人を雇用する流れが活性化しています。その背景には、「人口減少」・「少子高齢化」・「人手不足」などの深刻化が影響しています。

1)人口減少や少子高齢化による福祉サービス需要の拡大

日本では、人口減少や少子高齢化が深刻化しており、これに伴い、福祉サービスの需要が急速に増加しています。介護施設や福祉施設で働く資格を持った人材の需要はますます高まっており、現状の国内の労働力では需要を満たすことが難しくなっています。

2)国内の労働力供給の限界

福祉業界は独特の労働環境を有しており、長時間労働や重労働が求められることがあります。そのため、福祉業界への就業意欲が低く、国内の労働力の供給が限られている状況です。このような背景からも、外国人労働者の受け入れが注目されています。

福祉業界で外国人を雇用するメリット

福祉業界での外国人雇用には多くのメリットがあります。人手不足が解消できるのはもちろん、若い人材が確保できることは、福祉業界においては非常に大きなメリットです。また、特に労働力が不足している、地方都市でも採用可能な点も大きなメリットといえるでしょう。

1)人材不足の解消(一定期間、人材を確保できる)

外国人労働者の受け入れにより、福祉業界の人材不足を解消できます。外国人労働者は、一般的に3~5年程度、日本で働くことができます。

さまざまな要因から日本人に比べて、転職する可能性も低いため、3~5年程度のまとまった期間、人材確保が可能になります。また、外国人労働者は働く意欲が高く、責任感も強い傾向があるため、福祉サービスの質の向上にも寄与します。

2)若い人材を確保できる

若者の労働力減少は深刻な問題ですが、外国人労働者は若い世代が多く、活気と新たなアイデアをもたらすことができます。若い外国人労働者の受け入れは、福祉業界において新たな風を吹き込むことにつながります。

3)地方都市でも人材を確保できる

大都市圏ではなく地方都市においても、外国人労働者の受け入れが活性化しています。地方都市では、人口減少や高齢化が急激に進行しているため、人材確保が急務となっています。

外国人労働者の受け入れにより、地方都市でも人材を確保し、福祉サービスの提供を継続することが可能となります。

福祉業界で外国人を雇用するデメリット

福祉業界における外国人雇用には、さまざまなメリットがありますが、デメリット・問題点も存在します。これらのメリット・デメリットをしっかりと把握したうえで、外国人雇用を検討しましょう。

1)言語や文化の違いによるコミュニケーション

外国人労働者とのコミュニケーションは、言語や文化の違いにより一定の困難を伴います。日本語が話せない外国人労働者とのコミュニケーションは時間と努力が必要であり、意思疎通が困難になるリスクもあります。

2)教育に時間がかかる

外国人労働者は日本の福祉サービスに関する知識や技術を習得する必要があります。そのため、教育に時間がかかるというデメリットがあります。外国人にも理解しやすい、教育プログラムや研修体制を整えて対応しましょう。

3)採用手続きが複雑

外国人労働者の採用には、日本人採用にくらべると複雑な点があります。採用手続きや法的な規定に関する理解が不可欠であり、ルールや法律に対する知識が求められます。

福祉業界で外国人を雇用するための4つの制度

福祉業界では、労働力不足が深刻化しているため、さまざまな制度により外国人労働者を雇用できるようになっています。

1)EPA(経済連携協定)

EPAに基づき、「インドネシア・フィリピン・ベトナム」の外国人労働者を雇用できます。EPAに基づく外国人の受入れは、基本的には日本で介護福祉士の資格取得を目指すために行われます。

しかし、入国してから4年目の国家試験に合格できなかった場合は、帰国する必要があります。国家試験に合格した場合は、在留資格「介護」に移行し、在留期間の制限なく就労が可能となります。

2)介護(在留資格)

介護の在留資格を持つ外国人労働者を雇用できます。この在留資格を持つ外国人労働者は、介護福祉士候補者または介護福祉士としての経験やスキルを持っており、福祉業界での即戦力となります。

3)技能実習(在留資格)

発展途上国を含む様々な国に、日本の介護分野での技術を移転することが目的です。外国人労働者は、技能実習を利用することで、母国の経済発展に貢献します。

技能実習1号の場合、在留期間は1年間です。技能実習評価試験に合格すると技能実習2号・3号に移行して、在留期間が延長され最長で5年間の就労が可能です。

4)特定技能(在留資格)

専門知識を持つ外国人労働者を雇用することが可能です。特定技能は、一定の技術や技能を持つ外国人労働者に対して与えられる在留資格であり、福祉業界においても活用されています。特定技能1号では5年間、特定技能2号では期限なしで雇用できるため、長期雇用も可能です。

今後、福祉業界で外国人労働者は、特定技能の在留資格で働く方が増えていくでしょう。

この記事の監修者 
特定行政書士 宗方 健宏

行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。医療法人設立は、日々の診療で多忙な医師に変わり、設立から運営までサポートしております。障害福祉事業所の立ち上げ・運営コンサルティングは、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。