特定技能制度を活用して外国人を雇用した際には、雇用前・雇用中に法令で定められた「支援」を行う必要があります。この法定支援は多岐にわたっており準備にも実施にも時間がかかるため、登録支援機関に委託することが可能です。今回は、登録支援機関について解説します。

登録支援機関とは

登録支援機関とは、冒頭で述べた法定支援やその他のサービスを特定技能外国人に対して提供するために、法務大臣の登録を受けた民間団体を指します。特定技能制度は、2019年に導入された制度で、日本語能力や技能試験に合格した外国人が、14分野の特定技能で就労することを可能にするものです。

登録支援機関の数

登録支援機関の数は特定技能制度スタート時から増加を続けており、出入国在留管理庁によると、2023年12月22日の時点で登録支援機関として8,404件が登録されています。もっとも割合が高いのは株式会社等で、全体の約55%を占めています。次いで技能実習生の監理事業も行っているような協同組合等が約25.6%、行政書士法人が6.9%と続きます。

登録支援機関になるための要件は外国人の雇用・管理実績の有無や通訳者を配置していることなどそれほど厳しいものではないため、まずは登録を受けておこうという事業者が多くなっているものと考えられます。

登録支援機関の業務

登録支援機関の主な業務は、特定技能外国人に対する法定支援です。法定支援には次の9項目があります。

  1. 事前ガイダンス

特定技能での就職が内定した外国人に対し、日本で就労・生活するにあたって特に重要な以下の内容の説明を行います。

  • 雇用条件(業務内容、報酬額、労働時間など)
  • アルバイト、転売、Youtuberなどの副業は法律で禁止されていること
  • 入国手続の流れ
  • 保証金や違約金に関する契約は禁止されていること
  • 送出機関へは金額や内訳を十分に理解してから支払うこと
  • 支援委託費を負担する必要がないこと
  • 入国時の送迎に関すること
  • 住居の確保に関すること
  • 仕事上、日常生活に関する相談等の対応方法
  • 登録支援機関の担当者の連絡先
  1. 出入国時の送迎

特定技能外国人が来日した際には、登録支援機関の担当者が空港まで出迎えに行くこととなっています。また、帰国時についても同様に、登録支援機関の担当者が空港まで同行して出国を見送ります。

  1. 住居の確保・生活に必要な契約の支援

来日後に独力で家を探すのは難しいため、登録支援機関が家探しの支援を行います。受入企業が寮を保有している場合は、寮への入居に協力します。

日本での生活を始めるにあたっては、転入届の提出など各種行政機関への手続き、また銀行口座の開設といった各種契約が必要となります。こういった部分のサポートも登録支援機関の主要な業務の一つです。

  1. 生活オリエンテーション

来日前に行う事前ガイダンスと似たような形で、入国後にもオリエンテーションを実施します。内容としては日本で生活するにあたって必要な役所手続きや、病院の受診の仕方、防災・防犯に関する知識の提供などです。原則として本人の母国語で、8時間以上の時間を掛けて行わなければなりません。

  1. 日本語の学習機会の提供

近隣の日本語教室や、テキストの入手方法を説明します。特定技能外国人が希望する場合は日本語教師との契約もサポートします。

  1. 相談・苦情への対応

仕事または日常生活に関する相談や苦情を受け付ける窓口を設けます。基本的には通訳担当者の連絡先を伝えて、特定技能外国人が相談したいことがあるときに連絡できるようにします。相談受付時間は登録支援機関側が指定できますが、夜間でも相談できるような曜日を設定しておくことが求められています。

  1. 日本人との交流促進に関する支援

地域の自治会が行う催し物(盆踊り、年末年始のイベントなど)などを紹介し、本人の希望に応じて参加の補助を行います。このような支援も実施しなければならないと法令で定められています。

  1. 受入企業が倒産等したときの転職支援

頻繁に発生するものではありませんが、特定技能外国人が自主退職以外の形で退職せざるを得なくなった場合(受入企業が倒産してしまった等)は、ハローワークに同行したり推薦状を作成したりするなどして転職活動を支援します。

  1. 定期面談

登録支援機関の担当者は、3カ月に1回以上の頻度で支援対象の特定技能外国人・受入企業の責任者と面談しなければなりません。その際、特定技能外国人の雇用に関して法令違反がないかを確認します。万が一法令違反にあたる事案が発見されれば、速やかに入国管理局へ報告することとなります。

登録支援機関のサービス内容

ここまでは法令で実施は必須とされている登録支援機関の業務についてご説明しました。以下では、法定支援とは別に、登録支援機関が取り扱うことが多いサービス内容をまとめました。

  1. 人材紹介

登録支援機関は、人材紹介から入社までワンストップでサポートしてくれるところが多くなっています。

特定技能での外国人の受入れは国内外から行うことができ、外国人の国籍にもよって状況は変わってきますが、国内・国外両方の人材を紹介する登録支援機関や、国内人材に特化した登録支援機関など様々あります。

  1. 申請手続きの代行

外国人を雇用する際には、多数の書類を作成して入国管理局へ申請しなければなりません。登録支援機関に支援を委託することで、手間のかかる申請手続きも任せることができます。

  1. 日本語教育

特定技能外国人は入社時点で日本語検定のN4を取得していることになっていますが、それだけでは十分にコミュニケーションを取ることは困難です。登録支援機関によっては日本語講習を実施したり日本語教師を派遣したりしているところもあります。

登録支援機関の料金相場

登録支援機関への支援委託費の相場は以下のようになっています。

  • 支援委託料:1.5〜3万円
  • 人材紹介料:外国人の給与1カ月分程度
  • 申請書作成:10〜20万円

費用は登録支援機関の母体がどのような事業者か(人材紹介事業者、技能実習生の監理団体、行政書士など)によって異なります。また、安ければ良いわけでもありませんし、高ければ必ず安心できるというわけでもありません。登録支援機関の担当者と実際に会って話をすることが重要です。

なお、上記のほかに、諸々の実費(入国時の送迎に要する費用、外国の送出機関への手数料など)が必要となる場合があります。また建設業の場合は、登録支援機関の他に、建設技能人材機構(JAC)などへ会費を支払う必要があります。

この記事の監修者 
特定行政書士 宗方 健宏

行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。医療法人設立は、日々の診療で多忙な医師に変わり、設立から運営までサポートしております。障害福祉事業所の立ち上げ・運営コンサルティングは、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。