日本では少子高齢化に伴う労働人口の減少を背景に、人手不足が年々深刻さを増しています。このような状況を改善するため政府は「特定技能」という在留資格を創設し、外国人が日本で就労するための選択肢を拡大しました。2023年6月末時点では、食品工場や介護の現場で17万3,101人が特定技能外国人として就労しています。
このように多くの企業で特定技能の活用が進んでいますが、制度の仕組みについて具体的にご存じの方は少ないのではないでしょうか。本記事では特定技能制度について、要点をピックアップして解説します。
特定技能「1号」と「2号」
特定技能を利用して外国人を雇用するためには、その外国人が業務に関するある程度の技術を身に着けていなければなりません。求められる技術のレベルによって、特定技能には「1号」と「2号」の2種類が用意されています。
特定技能1号は概ね3年程度の業務経験があると認められた外国人が取得でき、さらに数年の経験を積み熟練した技能を身に着けた外国人に許可されるのが特定技能2号です。技能の測定は、主に特定技能専用の試験を受けることで行われます。
特定技能2号のほうが高い技術を有していることが求められる分、配偶者や子供とともに日本で生活できるようになったり、就労期間の上限がなくなったりするといった優遇措置が設けられています。
一方、特定技能1号については家族帯同は認められておらず、就労期間も5年が上限となっています。
受入れ可能な分野
人手不足に対策として導入された特定技能ですが、政府は制度の目的の中で「生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において・・・外国人を受け入れていく」としており、特定技能外国人を受け入れられる業種には制約があります。
具体的には、下記の12分野においてのみ特定技能外国人の受入れが認められています。
①介護
②ビルクリーニング
③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
④建設
⑤造船・舶用工業
⑥自動車整備
⑦航空
⑧宿泊
⑨農業
⑩漁業
⑪飲食料品製造業
⑫外食業
特定技能外国人を受け入れるための主な基準
外国人自身が満たすべき基準
特定技能制度においては、先程も触れたように、就労しようとする外国人自身が業務に関する技術を身に着けているかどうかを客観的に評価する試験が実施されています。特定技能で就労するためには、この試験に合格していることが求められます。また特定技能1号の場合は、日本での仕事や日常生活に最低限必要な日本語能力も必要とされています。具体的には日本語能力試験のN4に合格しておかなければなりません。
技術に関する試験は国内外で実施されていますが、開催頻度や試験の難易度は分野ごとにバラツキがあります。日本語能力試験についても国内外で実施されており、こちらは毎年7月と12月の年2回開催となっています。
なお、技能実習を3年間修了した外国人が特定技能1号で同じような業務に従事する場合は、既に業務経験と日本語能力があると判断されるため試験が免除となります。
受入企業が満たすべき基準
特定技能においては、雇用する特定技能外国人に支払う給与についての基準が厳格に定められており、同一の業務に従事する日本人従業員と同等以上にしなければなりません。
また、「給与の高い日本人を解雇して、給与が安く済む特定技能外国人を受け入れる」ということは禁止されているので、1年以内にリストラなどで非自発的離職者を出した事業者は特定技能外国人を受け入れることができません。この他、特定技能1号の外国人を雇用する場合には、後述する「支援」が行える体制を整えておくことも求められます。
特定技能外国人を雇用している期間中は、受入れ状況や給与の支払い状況などを記載した定期報告を四半期ごとに提出する必要もあります。
特定技能外国人に対する「支援」
特定技能1号の外国人への実施が義務付けられている支援は、以下の10項目となります。
①入国前の生活ガイダンスの提供(外国人が理解することができる言語により行う)
②入国時の空港等への出迎え及び帰国時の空港等への見送り
③保証人となることその他の外国人の住宅の確保に向けた支援の実施
④在留中の生活オリエンテーションの実施(銀行口座の開設及び携帯電話の利用に関する契約に係る支援を含む。外国人が理解することができる言語により行う)
⑤生活のための日本語習得の支援
⑥外国人からの相談・苦情への対応(外国人が理解することができる言語により行う)
⑦外国人が履行しなければならない各種行政手続についての情報提供及び支援(外国人が理解することができる言語により行う)
⑧外国人と日本人との交流の促進に係る支援
⑨外国人の転職支援
⑩定期的な面談の実施、行政機関への通報
雇用した特定技能外国人に対しては、このように数多くの支援を行っていかなければなりません。しかし、初めての受入れや多人数の受入れなどの場合は、自社だけで適切に支援を行うことは困難です。法令で定められている支援体制(2年以内に中長期在留者の受入れ実績がある、通訳担当者を配置しているなど)を整えることも容易ではありません。そういった時にこれらの支援を委託できるのが登録支援機関になります。
登録支援機関とは
登録支援機関とは、その名のとおり出入国在留管理庁長官の登録を受けた機関を指します。登録に際しては出入国在留管理庁による審査があり、法令を遵守している機関であることや、外国人の支援体制が十分に整っていることなどの認定を受けなければなりません。
登録支援機関の主な業務は、特定技能外国人への支援の実施です。受入企業が支援を委託できるのは登録支援機関のみとなっています。支援を委託した場合は、受入企業が独自に支援体制を整備する必要はなくなります。
特定技能制度は世論の関心の高い分野でもあるため、細かい制度改正が頻繁に行われています。最新の情報に基づいた受入れを行うためにも、専門機関である登録支援機関の活用をご検討ください。
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この記事の監修者 特定行政書士 宗方 健宏 行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。障害福祉事業所と医療法人は、設立~運営までサポートしております。障害福祉事業所は、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。 |