東京都では、外国人患者を受け入れる医療機関の体制整備を支援するため、「東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業」を実施しています。

令和8年度の当初募集は2026年7月24日に締め切られましたが、今回、新たに追加募集が行われることになりました。

追加募集の申請期限は、2026年11月10日(火)です。

この補助金では、外国人患者とのコミュニケーションに使用する翻訳機やタブレット端末の導入、問診票などの院内文書の多言語化、院内案内表示やホームページの多言語化、外国人患者向けの予約システム、職員の語学研修など、外国人患者を受け入れるための幅広い体制整備が対象となります。

外国人患者の受入れを進めたい病院・クリニックにとって活用を検討したい制度ですが、すべての医療機関が対象となるわけではなく、補助対象となる医療機関について一定の要件が設けられています。

本記事では、追加募集となった「令和8年度東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業」について、対象となる医療機関、補助対象経費、補助率、申請期限、申請時の注意点を解説します。

東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業とは

「東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業」は、外国人が言葉や文化の違いにかかわらず、症状に応じて安心して医療機関を受診できるよう、東京都内の医療機関が行う外国人患者の受入れ体制整備を支援する制度です。

外国人患者を受け入れる場合には、診療そのものだけでなく、受付、問診、検査、会計、入院案内など、さまざまな場面で外国語への対応が必要になります。

また、外国人患者が受診前に医療機関を探す際には、ホームページ上で診療科目や受診方法、予約方法などを外国語で確認できる環境も重要です。

こうした外国人患者への対応環境を整備するために必要となる費用の一部を、東京都が補助します。

令和8年度は追加募集が実施

令和8年度の当初募集では、申請期限が2026年7月24日とされていました。

しかし、東京都は2026年10月1日に追加募集を開始し、**新たな申請期限を2026年11月10日(火)**としています。

そのため、

「当初募集に間に合わなかった」

「今年度は申請を見送っていた」

「最近、外国人患者の受入れ体制を整備することになった」

という医療機関についても、改めて申請を検討する機会があります。

ただし、追加募集から申請期限までは期間が限られているため、対象となる可能性がある医療機関は、早めに申請要件と必要書類を確認することが重要です。

対象となる医療機関

補助対象となるのは、東京都内の病院・診療所のうち、次のいずれかに該当する医療機関です。

対象区分要件
①「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」に選定されている医療機関
②「外国人患者を受け入れる拠点的な医療機関」への応募を検討している医療機関
③医療機能情報報告で外国語対応について1言語以上「受入可能」と回答し、直近3か月の外国語対応外国人患者数が一定以上の医療機関

③については、直近3か月の間に外国語で対応した外国人患者数が、病院では延べ180人以上、診療所では延べ45人以上であることが必要です。

例えば、東京都内のクリニックで外国語対応を行っており、直近3か月で外国語による対応を行った外国人患者が延べ45人以上いる場合には、他の要件も含めて対象となる可能性があります。

一方、外国人患者を数名受け入れているというだけでは、この③の要件を満たすことにはなりません。

対象外となる医療機関に注意

対象となる医療機関の要件を満たしていても、補助対象外となる場合があります。

例えば、一般財団法人日本医療教育財団が実施している外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)の認証を取得したことがある医療機関等は、原則として対象外です。

また、過去にこの「東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業」の補助金を受けたことがある医療機関についても、原則として対象となりません。

ただし、令和元年度以前に補助を受けた医療機関が、今回初めて「職員の語学力の向上等」に係る経費を申請する場合には例外があります。

過去に東京都や他団体から外国人患者対応に関する補助を受けている医療機関については、申請前に対象となるか確認しておくことが重要です。

どのような費用が補助対象になる?

今回の補助金では、外国人患者の受入れ体制を整えるための幅広い費用が対象となっています。

対象となる主な取組は、多言語対応ツールの導入、院内文書の多言語化、案内表示の多言語化、ホームページの多言語化、外国人患者対応システムの導入、職員の語学力向上の6つです。

例えば、受付や診療時に使用する会話集・指差しツールの作成、翻訳機や通訳機能を備えたタブレット端末の導入などが考えられます。なお、スマートフォンは対象となるタブレット端末には含まれていません。

問診票、検査説明書、院内スタッフの名札などを英語や中国語などへ翻訳する費用も対象です。

さらに、院内案内板や看板を多言語化したり、医療機関のホームページに外国語ページを追加したりする費用についても対象となります。

外国人患者向けの診療予約システムなど、多言語対応や外国人患者の受入れ状況を把握するためのシステムを導入・改修する費用も対象です。

また、医療通訳養成研修や、医療従事者向けの語学研修・通信講座など、職員自身の外国語対応能力を高めるための費用にも利用できます。

基準額は130万円・補助率は2分の1

今回の事業では、補助対象となる経費について、

基準額:1,300千円(130万円)
補助率:2分の1

とされています。

したがって、実際の交付額については、対象となる経費、基準額、補助率などに基づいて算定されます。

外国人患者への対応を目的として設備等を導入したとしても、すべての支出がそのまま補助対象になるとは限りません。

導入予定の機器、翻訳費、システム費、研修費などが対象経費に該当するかについては、申請前に確認することが重要です。

対象となる事業期間

今回の追加募集で対象となるのは、交付決定日以降から2027年3月31日までに実施する外国人患者受入れ体制の整備です。

ここは今回の追加募集で特に注意したいポイントです。

通常募集と比べて申請時期が年度後半となるため、交付決定後から年度末までの限られた期間内に、発注、導入、翻訳、システム改修、研修などを完了させる必要があります。

例えば、ホームページの多言語化や予約システムの導入を予定している場合には、制作会社・システム会社とのスケジュールについても事前に確認しておく必要があります。

申請期限は2026年11月10日

追加募集の申請期限は、2026年11月10日(火)です。

当初募集の期限である7月24日から延長されたという扱いではなく、今回は**「追加募集」**として改めて申請の機会が設けられています。

10月から募集が始まっているため、申請書類の準備期間はそれほど長くありません。

特に、見積書の取得や事業計画の整理に時間がかかる可能性がありますので、対象となる医療機関は早めに準備を進める必要があります。

申請はjGrantsから行う

申請は、補助金電子申請システム「jGrants」を利用して行います。

申請に当たっては、事業計画書、経費所要額調書、歳入歳出予算書(見込書)抄本、見積書の写しなどを準備します。

jGrantsを利用するためのアカウントや電子申請の準備が完了していない場合には、書類作成だけでなく、申請環境についても早めに確認することをおすすめします。

交付決定前に発注・支出しない

この補助金で特に注意したいのが、交付決定前に対象事業を開始しないことです。

補助対象となるのは、交付決定日以降に実施した整備に係る費用です。

例えば、

「補助金を申請したので、先に翻訳会社へ発注した」

「採択される予定なので、タブレット端末を購入した」

という場合、交付決定前の支出については補助対象にならない可能性があります。

申請書を提出した日と交付決定日は同じではありません。

申請後、東京都による審査を経て交付決定を受けてから対象事業を開始することが重要です。

補助金は後払い

この補助金は、交付決定を受けた時点ですぐに支払われるものではありません。

交付決定後に対象事業を実施し、事業が完了した後に実績報告を行い、東京都による確認を経て補助金額が確定した後に支払われます。

そのため、機器の購入費、翻訳費、システム導入費、研修費などについては、医療機関側で一度支払う必要があります。

補助金の利用を前提として事業計画を立てる場合には、資金の支払時期についても確認しておく必要があります。

申請すれば必ず採択されるわけではない

この補助金は、申請要件を満たして書類を提出すれば必ず交付される制度ではありません。

外国人患者の受入実績や、事業計画書に記載された内容などについて審査が行われたうえで、交付の可否が決定されます。

そのため、事業計画書では単に、

「翻訳機を購入したい」

「ホームページを英語化したい」

と記載するだけではなく、現在どのような外国人患者を受け入れており、どのような課題があり、今回の整備によってどのように外国人患者の受入れ体制を改善するのかを整理することが重要です。

追加募集は準備期間が短い点に注意

今回の追加募集は、当初募集に申請できなかった医療機関にとって、新たに補助金を活用できる機会です。

一方で、2026年11月10日の申請期限までに申請書類を整え、交付決定後から2027年3月31日までに対象事業を完了させる必要があるため、スケジュールには十分注意する必要があります。

特に、

多言語ホームページの制作
外国人患者向け予約システムの導入
院内文書の翻訳
案内表示の変更
複数台のタブレット等の導入
職員向け研修の実施

などを予定している場合には、事業者から見積書を取得し、年度末までに納品・実施できるか確認したうえで事業計画を作成する必要があります。

「申請期限の直前に申請書だけ作成する」のではなく、実際に年度内に事業を完了できるかまで確認してから申請することが重要です。

当事務所のサポート

当事務所では、東京都内の病院・診療所を対象として、医療法人や医療機関に関する各種行政手続きをサポートしております。

今回の「東京都外国人患者受入れ体制整備支援事業」についても、まず医療機関が補助対象に該当するかを確認し、対象経費、実施予定の事業、申請スケジュールなどを整理することが重要です。

特に追加募集では、申請期限が2026年11月10日となっているため、外国人患者の受入れ体制整備を検討している医療機関は、できるだけ早い段階で準備を始めることをおすすめします。

「自院が補助対象になるか確認したい」「外国人患者向けにホームページや院内文書を多言語化したい」「翻訳機やタブレット端末を導入したい」「事業計画書や申請書類の作成について相談したい」といった医療機関からのご相談に対応いたします。