在留資格「留学」について、令和8年から日本語能力の確認や資格外活動の把握など、運用の適正化が進められ、すでに新しい取扱いが始まっています。
特に日本語教育機関で学ぶ留学生については、令和8年4月から、教育機関による資格外活動の把握・指導が強化されています。
また、日本語能力の確認についても、これまで認められていた「150時間以上の日本語学習歴」だけによる立証から、日本語試験の証明書又は面接によって、実際の日本語能力を確認する方法へ変更されています。
この日本語能力確認に関する新しい取扱いは、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請については令和8年7月1日以降の申請から適用され、在留資格認定証明書交付申請については令和8年10月以降に入学を予定する学生に係る申請から適用されています。
今回の変更は、単に提出書類を増やすものではありません。
留学生が日本で実際に勉強するために必要な日本語能力を有しているか、また、アルバイトが中心の生活になっていないかなど、「留学」という在留資格に沿った活動を適切に行っているかを、これまで以上に具体的に確認する運用となっています。
本記事では、在留資格「留学」の運用変更によって何が変わったのか、日本語能力の確認方法、資格外活動の管理、留学生本人や教育機関が注意すべきポイントについて解説します。
在留資格「留学」の運用が変更されています
在留資格「留学」は、日本の大学、専門学校、日本語教育機関などで教育を受ける外国人のための在留資格です。
令和8年1月に決定された「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を踏まえ、在留資格「留学」の運用について適正化が進められています。
大きな変更点は、次の2つです。
1.日本語教育機関へ入学する外国人の日本語能力確認の強化
2.留学生の資格外活動の把握・指導の強化
特に資格外活動については、すでに令和8年4月から運用面での強化が始まっています。
これまで以上に、外国人本人だけでなく、留学生を受け入れる教育機関側にも適切な在籍管理が求められることになります。
令和8年4月から資格外活動の把握・指導を強化
留学生がアルバイトなどを行う場合には、原則として資格外活動許可が必要です。
在留資格「留学」で包括的な資格外活動許可を受けている場合、原則として1週間について28時間以内の範囲で働くことができます。
教育機関の長期休業期間については、1日8時間以内での活動が認められています。
令和8年4月からは、日本語教育機関と連携した資格外活動の実態把握や指導が強化されています。
教育機関は、留学生が資格外活動許可の範囲を守っているかについて、継続して確認する必要があります。
つまり、留学生本人が「週28時間以内だから大丈夫」と自己管理するだけではなく、学校側でもアルバイトの状況を把握する仕組みになっています。
日本語能力の確認方法も変更
日本語教育機関に入学する外国人については、一定の日本語能力が必要です。
基本となるのは、「日本語教育の参照枠」のA1相当以上の日本語能力です。
今回の変更は、A1という日本語能力の水準そのものを大きく引き上げるものではありません。
重要なのは、その日本語能力をどのように確認するのかという点です。
日本語教育機関への入学を予定する外国人については、試験又は面接によってA1相当以上の日本語能力を確認する取扱いとなっています。
150時間の日本語学習歴だけでは足りない
これまでは、150時間以上の日本語学習歴があれば、A1相当以上の日本語能力を有することの立証として取り扱うことが可能でした。
例えば、海外の日本語教育機関などから、
「日本語を150時間以上学習しました」
という証明書を取得し、在留資格申請に使用する方法です。
しかし、新しい取扱いが適用される申請では、150時間以上日本語を勉強したという学習歴だけで、日本語能力を立証することはできません。
日本語試験の証明書又は面接によって、本人が実際に必要な日本語能力を有していることを確認する必要があります。
学習した「時間」だけではなく、実際の日本語能力を確認することが重視されるようになったということです。
試験又は面接による日本語能力の確認
日本語能力は、原則として次のいずれかの方法で確認します。
- 日本語能力を証明する試験
- 日本語教育機関による面接
日本語試験を受けていない外国人でも、教育機関が面接を実施し、必要な日本語能力を客観的に確認することで対応できる場合があります。
例えば、面接でN5レベルの問題を日本語で出題し、何問回答できたのかなど、どのような方法で日本語能力を確認したのかを具体的に記録することが求められます。
また、試験の証明書がある場合でも、可能な限り本人との面接を行い、日本語能力を確認することとされています。
単に「会話ができた」「日本語に問題がない」と判断するのではなく、確認方法を具体的に説明できることが重要です。
日本語能力確認の適用時期
日本語能力確認に関する新しい取扱いは、申請の種類によって適用時期が異なります。
| 手続き | 適用時期 |
|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請 | 令和8年10月以降に入学予定の学生に係る申請から |
| 在留資格変更許可申請 | 令和8年7月1日以降の申請から |
| 在留期間更新許可申請 | 令和8年7月1日以降の申請から |
したがって、令和8年9月現在、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請についてはすでに新しい取扱いが始まっています。
また、令和8年10月以降に日本語教育機関へ入学する予定の学生についても、在留資格認定証明書交付申請から新しい取扱いが適用されています。
この取扱いは、日本語教育機関だけでなく、大学の日本語別科にも適用されます。
なお、一定の国・地域の出身者が外国の大学等を卒業し、その卒業証明書等を提出する場合など、対象外となるケースもあります。
教育機関が3か月に1度アルバイト状況を確認
資格外活動については、教育機関が3か月に1度、在籍する留学生の状況を確認することとされています。
確認する主な内容は次のとおりです。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 資格外活動許可 | 許可を取得しているか |
| アルバイト先 | どこで働いているか |
| 活動内容 | どのような仕事をしているか |
| 活動時間 | 毎日何時間働いているか |
アルバイト先が複数ある場合には、すべての勤務先を確認する必要があります。
確認方法は一律に決められているわけではなく、本人からの自己申告による確認も可能です。
ただし、必要となった場合には、教育機関がどのような方法で勤務先、勤務時間、仕事内容などを把握し、どのような指導を行っているのか説明できる体制が必要です。
複数のアルバイトをしている場合は注意
留学生の中には、複数の勤務先でアルバイトをしている方もいます。
例えば、
コンビニ 週15時間
飲食店 週10時間
別の店舗 週8時間
という場合、合計すると週33時間になります。
資格外活動の**「週28時間以内」**という制限は、勤務先ごとに28時間ではありません。
複数の勤務先で働く場合には、原則としてすべての資格外活動時間を合計して判断します。
また、教育機関では日々の資格外活動時間を把握し、どの曜日から起算した場合でも週28時間以内に収まっていることを確認することが求められています。
勤務先を増やす場合は、特に勤務時間の管理に注意する必要があります。
週28時間を超えて働いた場合
資格外活動許可の範囲を超えて働いていることが確認された場合、教育機関は本人に対して指導を行い、直ちに状況を改善させる必要があります。
さらに、指導しただけで終わるのではなく、実際に違反状態が改善されたことまで確認します。
例えば、
「アルバイト先から頼まれた」
「人手不足だった」
「本人が勤務時間を勘違いしていた」
という事情があっても、資格外活動許可の範囲を超えて働いてよいことにはなりません。
留学生本人だけでなく、留学生を雇用する企業側も勤務時間を適切に管理することが重要です。
資格外活動違反が改善されない場合
今回の運用強化で特に注意したい部分です。
例えば、留学生から、
「雇用主から週28時間を超えて働くよう求められている」
という申告があった場合や、教育機関が指導しても資格外活動違反が改善されない場合には、把握した情報を最寄りの出入国在留管理官署へ報告することが求められています。
また、教育機関は、資格外活動の確認結果や指導内容について適切に記録・保存する必要があります。
資格外活動の管理が十分に行われていない場合には、教育機関側についても、適切な管理体制が整備されていないと判断される可能性があります。
留学生本人が注意すべきこと
留学生本人も、自分の在留資格やアルバイト状況をこれまで以上に適切に管理することが重要です。
特に次の点に注意してください。
- 資格外活動許可を取得してからアルバイトを始める
- 原則として週28時間以内を守る
- 複数のアルバイト先がある場合は勤務時間を合計する
- 学校から勤務先や勤務時間を確認された場合は正確に回答する
- 勤務時間を自分でも記録しておく
- 学業よりアルバイトが中心にならないようにする
- 出席状況や成績にも注意する
在留資格「留学」の本来の活動は、日本の教育機関で教育を受けることです。
資格外活動許可は、あくまで本来の留学活動を妨げない範囲で、例外的にアルバイト等を認める制度です。
留学から就労ビザへ変更する場合も注意
日本語学校、専門学校、大学などを卒業した後、日本企業へ就職する場合には、「留学」から「技術・人文知識・国際業務」などの就労可能な在留資格へ変更するケースがあります。
この場合、就職先や仕事内容だけを確認すればよいわけではありません。
留学中に適切な在留活動を行っていたかも重要です。
例えば、
- 出席状況が良くない
- 学業を十分に行っていない
- 資格外活動許可の範囲を超えて働いていた
- 長期間アルバイト中心の生活をしていた
- 在留中の活動状況に問題がある
といった事情がある場合、その後の在留資格変更許可申請に影響する可能性があります。
卒業後に日本で就職したい方は、就職が決まってから在留資格を意識するのではなく、留学中から適切な在留状況を維持することが重要です。
教育機関側で重要となる対応
今回の運用変更は、日本語教育機関側にも大きく関係します。
主に次の対応が重要になります。
- 入学希望者の日本語能力の確認
- 必要に応じた面接の実施
- 日本語能力の確認方法の記録
- 各種確認書の作成
- 3か月に1度の資格外活動状況の確認
- 複数のアルバイト先の把握
- 毎日の資格外活動時間の確認
- 違反が確認された場合の指導
- 改善状況の確認
- 確認・指導内容の記録保存
- 必要な場合の入管への報告
特に資格外活動については、単に本人から「28時間以内です」と確認するだけではなく、教育機関として適正に管理できる体制を整えることが求められます。
当事務所のサポート
当事務所では、在留資格「留学」に関する手続きや、留学から就労資格への変更に関するご相談に対応しております。
特に、日本語学校、専門学校、大学等を卒業して日本企業へ就職する場合には、本人の学歴、専攻内容、就職後の仕事内容、これまでの在留状況などを確認したうえで、在留資格変更許可申請を行う必要があります。
例えば、次のようなご相談に対応しています。
留学から技術・人文知識・国際業務へ変更したい
卒業後に日本企業へ就職したい
予定している仕事内容で就労ビザを取得できるか確認したい
留学中の資格外活動について心配がある
アルバイト時間が就労ビザへの変更に影響するか確認したい
外国人留学生を新卒採用したい
留学生を採用する際の在留資格手続きを確認したい
在留資格「留学」については、令和8年から、日本語能力の確認や資格外活動の把握・指導について新しい運用がすでに始まっています。
留学生本人だけでなく、留学生を受け入れる教育機関や、卒業後に外国人留学生を採用する企業にとっても重要な変更です。
留学から就労資格への変更や、外国人留学生の採用をご検討されている場合は、お早めにご相談ください。

