本記事は、出入国在留管理庁が公表した「外国人が日本語や我が国の制度・ルール等を学習するプログラムの検討に関する『法務大臣政務官PT報告書』」及び関連公表資料を基に作成しています。制度内容は今後変更される可能性があります。実際に永住許可申請、在留資格申請、帰化申請を行う際には、最新の公表情報を確認する必要があります。

出入国在留管理庁は、外国人が日本語や日本の制度・ルール等を学習するための「日本語・生活学習プログラム(仮)」の創設に向けた検討内容を公表しました。

このプログラムは、日本に在留する外国人が、日本語だけでなく、日本で生活するうえで必要となる制度、ルール、生活知識等を学ぶことを目的とするものです。

特に注目すべき点は、将来的に、永住許可申請や一定の長期滞在を目的とする在留申請の際に、学習プログラムの受講を許可要件とすることが検討されている点です。

また、永住許可・帰化の審査においては、単にプログラムを受講したかどうかだけでなく、学習内容を理解しているかどうか、いわゆる「理解度」についても確認することが検討されています。

永住許可や帰化を検討している外国人の方にとって、日本語能力や日本の制度・ルールへの理解は、今後ますます重要になる可能性があります。

本記事では、日本語・生活学習プログラム(仮)の概要と、永住許可申請・帰化申請を検討している方への影響について解説します。

日本語・生活学習プログラム(仮)とは

日本語・生活学習プログラム(仮)とは、日本に在留する外国人やその帯同家族が、日本語や日本の制度・ルール等を体系的に学習するために創設が検討されているプログラムです。

これまでも、外国人向けの日本語学習支援や生活オリエンテーションは、自治体、勤務先、学校、日本語教育機関、登録支援機関などによって行われてきました。

しかし、地域や受入れ機関によって支援内容に差があり、日本で生活するために必要な情報を十分に得られないまま在留を続けているケースもあります。

今回検討されている日本語・生活学習プログラム(仮)は、外国人が日本社会で安定して生活し、責任ある社会の一員として行動できるよう、日本語能力と生活上必要な知識の習得を支援するものです。

単なる日本語教室ではなく、日本で暮らすために必要な制度・ルール・生活知識を学ぶ点に特徴があります。

プログラム創設が検討されている背景

日本に在留する外国人は増加しており、就労、留学、家族滞在、定住、永住など、在留の目的も多様化しています。

外国人が日本で安定して生活するためには、日本語能力だけでなく、税金、社会保険、労働、医療、教育、地域生活、在留手続きなど、日本の制度やルールを理解することが重要です。

一方で、日本の制度やルールを十分に理解できないことにより、住民税や社会保険料の未納、在留カードに関する届出漏れ、労働条件の誤解、地域生活上のトラブルなどが生じることがあります。

永住許可申請や帰化申請では、在留状況、納税状況、公的義務の履行状況、素行、日本社会への適応状況などが確認されます。そのため、日本の制度・ルールを理解し、適切に履行しているかどうかは、長期的な在留や日本国籍取得を考えるうえで重要な要素となります。

このような背景から、国として体系的な学習プログラムを整備し、外国人の円滑な社会適応を支援する方向で検討が進められています。

プログラムの大まかな内容

日本語・生活学習プログラム(仮)は、大きく分けると「日本語学習」と「生活学習」で構成されることが想定されています。

日本語学習

日本語学習では、日本で生活するうえで必要となる日本語能力の習得が想定されます。

具体的には、日常会話だけでなく、役所、病院、学校、勤務先、金融機関、不動産会社などで必要となるやり取りを理解し、自分の状況を説明できる力が重要になると考えられます。

また、行政からの通知、税金・社会保険に関する書類、雇用契約書、学校からのお知らせ、医療機関での説明など、生活に関わる文書を理解する力も重要です。

永住許可や帰化を目指す場合、日本語能力は単なる会話力ではなく、日本社会で安定して生活できるかどうかを判断する要素の一つになり得ます。

生活学習

生活学習では、日本の制度・ルール・生活上の基本的な知識を学ぶことが想定されます。

具体的には、次のような内容が考えられます。

税金に関する基礎知識
年金・健康保険など社会保険制度
労働契約・賃金・労働時間などの労働ルール
住民登録や住所変更の手続き
在留カードに関する届出義務
交通ルール
医療機関の利用方法
子どもの教育や学校制度
ゴミ出しや地域生活のルール
防災・災害時の対応
近隣トラブルを防ぐための生活マナー

特に、税金、年金、健康保険、在留カードの届出義務などは、在留審査や永住許可申請に関係しやすい分野です。

生活学習は、単なる生活マナーの学習ではなく、日本で長期的に在留するための基礎知識として重要になる可能性があります。

入国前・入国後の学習も想定

日本語・生活学習プログラム(仮)では、日本に入国してから学ぶだけでなく、入国前から学習できる仕組みも検討されています。

公表資料では、ICTを活用した学習教材、オンデマンド方式による学習、AI等を活用した双方向型の学習、理解度チェックの仕組みなどが検討されています。

つまり、外国人が日本に来てから初めて生活ルールを知るのではなく、入国前又は入国直後から、日本で生活するための基本的な知識を身につける方向性といえます。

特定技能、技術・人文知識・国際業務、家族滞在、日本人の配偶者等、定住者など、長期的な在留につながる在留資格では、今後、来日前後の学習履歴が重要になる可能性があります。

永住許可申請への影響

今回の検討で最も重要な点の一つが、永住許可申請への影響です。

公表資料では、永住許可申請の際に、日本語・生活学習プログラム(仮)の受講を許可要件とすることが検討されています。

現時点では、具体的な開始時期、対象者、必要な受講時間、修了証明書の形式、理解度確認の方法などは確定していません。

しかし、将来的に制度化された場合、永住許可申請では、従来の要件に加えて、次のような点が確認される可能性があります。

日本語・生活学習プログラムを受講しているか
所定の学習時間を満たしているか
修了証明や受講記録を提出できるか
日本の制度・ルールについて基本的な理解があるか
税金・年金・健康保険などの公的義務を理解しているか
在留カードや住居地に関する届出義務を理解しているか
日本で安定して生活するための基礎的な日本語能力があるか

永住許可は、単に長く日本に住んでいれば当然に認められるものではありません。

永住許可申請では、素行が善良であること、独立して生計を営むことができること、その方の永住が日本国の利益に合すると認められることなどが確認されます。

また、税金、年金、健康保険料の納付状況、在留状況、交通違反、出国歴、扶養関係なども審査上重要です。

日本語・生活学習プログラム(仮)が永住許可審査に組み込まれた場合、「日本で生活するための制度やルールを理解し、責任ある社会の一員として生活できるか」という点が、より明確に確認される可能性があります。

特に、永住許可申請では、過去の納税状況や社会保険料の支払状況だけでなく、今後も日本で安定して生活できるかという点が重要です。日本語や生活ルールの理解が不十分な場合、税金や社会保険の手続き漏れ、届出漏れ、行政通知の見落としなどにつながる可能性があります。

そのため、今後は、永住許可申請を検討する段階から、日本語能力の向上と、日本の制度・ルールへの理解を意識しておくことが重要になります。

一定の長期滞在を目的とする在留申請への影響

公表資料では、永住許可申請だけでなく、「一定の長期滞在を目的とする在留申請」の際にも、学習プログラムの受講を許可要件とすることが検討されています。

この「一定の長期滞在を目的とする在留申請」が、具体的にどの在留資格や手続を指すのかは、現時点では確定していません。

ただし、短期滞在のような一時的な滞在ではなく、日本で中長期的に生活することを予定する在留申請が対象として検討される可能性があります。

例えば、次のような在留資格や申請では、今後の制度設計を注視する必要があります。

技術・人文知識・国際業務
特定技能
企業内転勤
技能
経営・管理
家族滞在
日本人の配偶者等
永住者の配偶者等
定住者

もちろん、現時点でこれらの在留資格すべてについて受講が義務化されているわけではありません。

しかし、制度化された場合には、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請の場面で、学習プログラムの受講状況が確認される可能性があります。

特に、長期的に日本で生活することが予定されている申請では、本人だけでなく、帯同家族が日本で生活するための基本的な知識を持っているかどうかも重要になる可能性があります。

例えば、就労系の在留資格では、本人が勤務先で適正に働けるかどうかに加えて、日本での生活基盤を安定して築けるかどうかが問題となる場面があります。

また、家族滞在や身分系の在留資格では、配偶者や子どもを含め、日本での生活に必要な制度・ルールを理解できるかが重要になる可能性があります。

今後、在留審査に学習プログラムの受講状況が反映される場合、在留申請は「必要書類をそろえるだけ」の手続きではなく、入国前・入国後の生活準備や学習状況も含めて確認される方向に進む可能性があります。

帰化申請への影響

帰化申請についても、日本語・生活学習プログラム(仮)は大きな影響を及ぼす可能性があります。

帰化申請は、在留資格の申請ではなく、日本国籍を取得するための国籍法上の手続きです。審査は出入国在留管理庁ではなく、法務局を通じて行われます。

現在でも、帰化申請では日本語能力が重要な要素とされています。日常生活に支障のない日本語能力、会話及び読み書きの力、日本社会への適応状況などが確認されます。

今回の検討では、帰化の審査においても、日本語・生活学習プログラム(仮)の理解度を確認することが検討されています。

これが制度化された場合、帰化申請における日本語能力や日本社会への理解について、より体系的・客観的な確認が行われる可能性があります。

例えば、法務局での面談や書類確認だけでなく、学習プログラムの受講履歴、修了証明、理解度確認の結果などが、帰化審査に関係する可能性があります。

帰化申請では、日本語能力だけでなく、納税状況、年金・健康保険、交通違反、犯罪歴、収入、家族関係、生活状況、日本社会への定着状況などが総合的に確認されます。

そのため、日本語・生活学習プログラム(仮)は、帰化申請における「日本で生活する力」や「日本社会への理解」を確認する一つの材料となる可能性があります。

帰化を検討している方は、日本語の読み書きや会話だけでなく、日本の制度、社会ルール、行政手続きへの理解も意識して準備しておくことが重要です。

「受講しただけ」では足りない可能性

今回の検討で特に注意すべき点は、永住許可・帰化の審査において、単にプログラムを受講したかどうかだけでなく、「理解度」も確認することが検討されている点です。

つまり、形式的に受講履歴があるだけでは不十分となる可能性があります。

将来的には、次のような方法で理解度が確認される可能性があります。

オンライン上での確認テスト
受講後の理解度チェック
修了証明書の提出
申請時の質問事項
面談での確認
学習履歴の確認

現時点で具体的な確認方法は決まっていませんが、方向性としては、「受講した事実」だけでなく、「内容を理解し、日本での生活に生かせる状態にあるか」が重視される可能性があります。

特に永住許可や帰化では、税金、年金、健康保険、在留カードの届出、交通ルール、労働ルールなどを理解していないことが、未納、届出漏れ、法令違反につながる場合があります。

そのため、今後は「日本語が話せるか」だけでなく、「日本の制度を理解し、適切に履行できているか」がより重要になる可能性があります。

在留審査や帰化審査における理解度確認が導入された場合、外国人本人は、制度やルールを暗記するだけでなく、自分の生活に関係する手続きや義務を理解していることが求められる可能性があります。

永住許可・帰化を検討している方が準備すべきこと

日本語・生活学習プログラム(仮)は、現時点では検討段階です。

したがって、今すぐすべての永住許可申請や帰化申請で受講が義務化されているわけではありません。

しかし、今後の制度改正を見据えると、永住許可や帰化を検討している方は、早い段階から準備を進めておくことが重要です。

具体的には、次の点を意識しておくとよいでしょう。

日本語学習を継続する
日本語能力試験等の受験を検討する
税金の納付状況を確認する
年金・健康保険料の支払状況を確認する
在留カードや住居地に関する届出を適切に行う
勤務先や家族の状況を整理する
交通違反や法令違反に注意する
出国日数が多くなりすぎないよう注意する
行政からの通知や書類を確認できるようにする
将来、受講証明や学習履歴を提出できるよう管理する

永住許可申請では、公的義務の履行状況が非常に重要です。

税金や社会保険料の未納、届出義務違反、交通違反などがあると、申請に不利に働く可能性があります。

日本語・生活学習プログラム(仮)が制度化された場合には、これらのルールを理解しているかどうかも、審査上の確認対象になる可能性があります。

また、帰化申請を検討している方は、日本語で自分の生活状況や申請理由を説明できること、行政手続きや社会制度について基本的な理解があることも重要です。

制度が正式に始まってから慌てて対応するのではなく、日頃から日本語学習と生活ルールの理解を進めておくことが大切です。

外国人を雇用する企業・受入れ機関への影響

日本語・生活学習プログラム(仮)は、外国人本人だけでなく、外国人を雇用する企業や受入れ機関にも影響する可能性があります。

外国人材が日本で安定して働き、将来的に永住許可や帰化を希望する場合、勤務先の支援体制も重要になります。

例えば、企業側には次のような対応が求められる可能性があります。

日本語学習の機会を案内する
生活ルールや行政手続きを説明する
税金・社会保険の手続きを適切に行う
在留カードや住所変更等の届出について注意喚起する
家族を含めた生活支援を行う
外国人従業員が行政通知を理解できるよう支援する

特に、特定技能、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、家族滞在などで外国人を受け入れている企業は、在留資格の取得・更新だけでなく、入社後の生活支援や日本語学習支援についても意識する必要があります。

今後は、外国人雇用において「採用できるか」だけではなく、「日本で安定して生活し、地域社会に適応できるよう支援できるか」が重要になると考えられます。

また、外国人従業員が将来的に永住許可や帰化を希望する場合には、勤務先での雇用状況、社会保険加入状況、給与支払状況、納税状況なども重要になります。

企業としても、外国人材の採用時だけでなく、在留期間更新、家族の帯同、永住許可申請、帰化申請まで見据えた継続的な支援体制を整えておくことが望ましいといえます。

制度はまだ検討段階

日本語・生活学習プログラム(仮)は、現時点では制度設計の検討段階です。

そのため、対象者、対象となる在留資格、受講方法、受講時間、修了証明の形式、理解度確認の方法、開始時期などは、今後の制度設計によって決まることになります。

現時点で、永住許可申請や帰化申請において直ちに受講が必要とされているわけではありません。

ただし、永住許可申請、一定の長期滞在を目的とする在留申請、帰化申請に影響する可能性がある点は、非常に重要です。

永住許可や帰化を検討している方は、制度が正式に開始してから慌てて準備するのではなく、今のうちから日本語能力、日本の制度・ルールへの理解、公的義務の履行状況を確認しておくことをおすすめします。

制度の詳細が公表された場合には、自分の在留資格や申請予定にどのような影響があるかを確認し、必要に応じて早めに準備を進めることが重要です。

在留資格・永住許可・帰化に関するご相談

当事務所では、在留資格申請、永住許可申請、帰化に関するご相談に対応しております。

永住許可申請では、在留期間、収入、納税状況、年金・健康保険、扶養関係、交通違反、出国歴、身元保証人などを総合的に確認する必要があります。

また、帰化申請では、住所要件、素行、生計、国籍、日本語能力、日本社会への適応状況など、多くの事項を整理する必要があります。

今後、日本語・生活学習プログラム(仮)が制度化された場合には、受講状況や理解度確認が審査に影響する可能性があります。

永住許可や帰化を検討している方、外国人従業員の長期的な在留支援を検討している企業様は、お早めにご相談ください。