令和5年に道路運送法施行規則が改正・施行されました。具体的には「運転者証の車内掲示削除等」・「運営協議会関係」・「手続き簡素化と運送事業者との連携拡大」・「地域公共交通会議及び運営協議会」・「自家用有償旅客運送者が利用者から収受する対価の取扱い」の5つが改正・施行されました。本記事では具体的な改正内容について、一つ一つ解説します。

運転者証の車内掲示削除等について

施行規則第51条の23と施行規則第51条の28が改正され、改正のポイントは2点になります。

  • 運転者証の作成・車内掲示義務廃止

これまで車内に乗務員等の氏名表示する必要がありましたが廃止されました。こちらについてはバス・タクシーなども同様に廃止になりました。

  • 自家用有償旅客運送者の名称・自動車登録番号(ナンバー)を車内へ掲示

「市町村」から「自家用有償旅客運送者」への下記1~3が義務になりました。

  1. 対価を旅客に見やすいように表示
  2. 自家用有償旅客運送自動車内に当該自家用有償旅客運送者の名称
  3. 当該自家用有償旅客運送自動車の自動車登録番号を旅客に見やすいように表示
改正前
改正後
施行規則第51条の23自家用有償旅客運送を行う特定非営利活動法人等は、自家用有償旅客運送自動車に運転者等を乗務させるときは、次に
掲げる事項(特定自動運行保安員については、第四号及び第五号に掲げる事項を除く。)を記載し、かつ、当該運転者等
の写真を貼り付けた運転者証(特定自動車運行保安員については、保安員証)を作成し、これを旅客に見やすいように
表示し、又は当該自家用有償旅客運送自動車内に掲示しなければならない
一作成番号及び作成年月日
二自家用有償旅客運送者の名称
三運転者等の氏名
四運転免許証の有効期限
五第51条の16第1項及び第3項に規定する要件に係る事項
削除
施行規則第51条の28自家用有償旅客運送を行う市町村は、第51条の14第1項の対価のほか、自家用有償旅客運送自動車内に、当該市町村の
名称及び当該自家用有償旅客運送自動車の運転者等の氏名を旅客に見やすいように掲示しなければならない
・対象が「市町村」から「自家用有償旅客運送者」へ
・第51条の14第1項の対価を旅客に見やすいように表示
・自家用有償旅客運送自動車内に当該自家用有償旅客運送者の名称
・当該自家用有償旅客運送自動車の自動車登録番号を旅客に見やすいように表示

運営協議会関係について

施行規則第51条の7と施行規則第9条の2が改正され、改正のポイントは2点になります。

  • 協議の場を運営しやすくするため
  • 「運営協議会」を「地域公共交通会議」へ統合

これまでの地域公共交通会議と運営協議会が、原則、「地域交通会議」に一本化されました。

改正前
改正後
施行規則第51条の7地域住民の生活に必要な旅客輸送を確保するために必要な自家用有償旅客運送に関する協議を
行うために一又は複数の市町村長又は都道府県知事が主宰する協議会
削除
施行規則第9条の2地域住民の生活に必要な旅客輸送の確保その他の旅客の利便の増進を図るために必要な
一般旅客自動車運送事業及び自家用有償旅客運送に関する協議を行うために一又は複数の
市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)又は都道府県知事が主催する会議
削除

手続き簡素化・運送事業者との連携拡大について

施行規則第51条の2の2と施行規則第51条の10第2項が改正され、改正のポイントは2点になります。

  • 事業者協力型自家用有償運送に配車サービスの提供を追加
  • 更新登録の手続き簡素化(添付書類の省略化)

更新時の書類作成・添付書類が削減されました。

改正前
改正後
施行規則第51条の2の2法第79条の2第1項第5号において国土交通省令で定める事項は、自家用有償旅客運送自動車の整備管理の体制の整備とする施行規則第51条の2の2の事業者協力型の類型に「旅客の運送の手配に係るサービスの提供」を追加
施行規則第51条の10第2項更新登録申請書には、施行規則第51条の3に規定する書類及び登録証を添付しなければならない
※施行規則第51条の3に規定する添付書類:
①定款・謄本・役員名簿
②路線図(交通空白) ③欠格事由に該当していない旨の宣誓書
④協議が調っていることを証する書面
⑤自動車の使用権原を証する書面
⑥福祉車両運転者の要件確認書面
⑦セダン型車両運転時の要件確認書面
⑧運行管理体制図
⑨整備管理体制図
⑩事故発生時の連絡体制図
⑪任意保険証書等
⑫旅客の名簿
⑬自動運転に係る書類
①、②、⑤~⑬の書類について、内容に変更がない場合は添付省略可

地域公共交通会議及び運営協議会について

改正のポイントは「有効期間の更新の登録時の協議方法の簡素化」と「交通空白地域に該当する目安を提示」

  • 有効期間の更新の登録時の協議方法の簡素化

更新の登録を行う場合、意見公募形式(更新の登録を行うことについて地域公共交通会議の構成員に対して周知し、一定期間異議がない場合には、当該更新に係る協議が調ったものとみなす協議形式をいう。)によることができるようになりました。

  • 交通空白地に該当する目安を提示

交通空白地についての目安が提示されました。
・半径1キロメートル以内にバスの停留所及び鉄軌道駅が存しない地域であって、タクシーが恒常的に30分以内に配車されない地域
・当該地域における一般旅客自動車運送事業者・鉄道事業者・軌道事業者の営業時間外

自家用有償旅客運送者が利用者から収受する対価について

  • 対価の設定目安をタクシー運賃の約8割の水準まで引上げ

運送の対価は地域におけるタクシーの上限運賃(ハイヤー運賃を除く。)のおおむね2分の1の範囲内でしたが、今回の改正により8割になりました。

  • 対価の目安の考え方を新たに提示

自家用有償旅客運送者が利用者から収受する対価の取扱いに係る考え方について明確化されました。下記1・2を根拠に運輸局公表の自家用有償旅客運送対価の目安が公表されました。

  1. 自家用有償旅客運送者が利用者から収受する対価の目安を算定するための経常費用
  2. 対価の目安の設定の考え方
  • 地方運輸局において対価の目安を公表

対価の目安は、運輸局公表の自家用有償旅客運送対価の目安をご覧ください。

改正前
改正後
自家用有償旅客運送者が利用者から収受する対価2.(3)①旅客から収受する対価の水準
イ.運送の対価は、当該地域におけるタクシーの上限運賃の概ね1/2の範囲内であること。
ただし、地域公共交通会議等において調った協議結果に基づき、1/2を越える運送の対価を設定することも可能
2.(3)①旅客から収受する対価の水準
イ.運送の対価は、当該地域に適用されるタクシー運賃の約8割(地方運輸局及び沖縄総合事務局において、
インターネットその他の適切な方法により、当該地域の運送の対価を公表するものとする。)であること
ただし、地域公共交会議等において調った協議結果に基づき、約8割を越える運送の対価を設定することも可能

運輸局公表の自家用有償旅客運送対価の目安

改正前までは、運送の対価は地域におけるタクシーの上限運賃(ハイヤー運賃を除く。)のおおむね2分の1の範囲内でしたが、今回の改正により8割になりました。今回の改正で現在運営している事業所で運賃を変更したい場合、変更前に協議会の合意が必要ですのでご留意ください。

画像引用:関東運輸局「自家用有償旅客運送の対価の目安の設定について」

今回の法令改正の大きな注目点は、自家用有償旅客運送対価の目安が改正されたことです。現在、収支ギリギリで経営している事業所さんにとっては喜ばしいことだと思いますが、運賃を上げることによりご利用者さんの利用回数が減る可能性もあります。事業所として運賃をどこまで引き上げるか悩ましいところはあります。市区町村によっては補助金で利用者さんの利用をサポートしている市区町村もありますが、補助金の額が引き上げられるのか行政に確認をした方が良いでしょう。

令和6年4月までに政府が「自家用有償旅客運送」制度の運用改善策について結論を出しますが、こちらの内容については分かり次第、掲載する予定です。

福祉有償運送事業を始めたい方はお気軽にご連絡ください!詳しくは下記ページをご覧ください。

福祉有償運送事業所開設サポート

この記事の監修者 
特定行政書士 宗方 健宏

行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。医療法人設立は、日々の診療で多忙な医師に変わり、設立から運営までサポートしております。障害福祉事業所の立ち上げ・運営コンサルティングは、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。