「障害福祉サービスを提供する施設で、管理的な業務にチャレンジしたい」・「施設内で働く職員のマネジメントや人材育成で力を発揮したい」・「実務経験を活かして、利用者に寄り添った個別支援計画を作成したい」このような方は、サービス管理責任者の資格に興味をお持ちなのではないでしょうか。この記事では「サービス管理責任者とは?」「サービス管理責任者の業務内容」「サービス管理責任者になるための方法」「サービス管理責任者の就業先」について解説いたします。

サービス管理責任者とは?

「サービス管理責任者」は、障害福祉サービスを提供している施設でサービス向上のため、障害者総合支援法により配置が義務付けられている専門職です。個別支援計画の作成、利用者やご家族からの相談に対する支援、職員の育成、地域の各種関係機関との連携窓口役を担っています。

資格を取得するためには「実務経験の要件」を満たした上で、各都道府県で実施される「研修(基礎研修、実践研修)」を修了する必要があります。

障害者総合支援法により、障害福祉サービス事業所ごとに配置基準が定められています。

施設区分配置基準増員が必要な要件
入所系、通所系事業所、就労支援系事業所利用者60人以下1名利用者61人以上、かつ40人増えるごとに1名ずつ増員
共同生活援助利用者30人以下1名利用者31人以上、かつ30人増えるごとに1名ずつ増員

サービス管理責任者の業務内容

サービス管理責任者には主に4つの業務があります。担当する主な業務は「個別支援計画の作成」・「利用者、ご家族からの相談対応」・「施設内のチームマネジメント、人材育成」・「地域の関係機関との連携窓口」になります。

1.個別支援計画の作成

個別支援計画の作成・実施・見直しをします。利用者の障害の状況を把握し、必要な支援を考え、短期的、長期的な計画を立てていきます。計画は利用者の変化に合わせて見直し、最適な計画を提供していきます。利用者に最適な個別支援計画を作成するために利用者、ご家族の定期的な面談やスタッフとの個別支援会議の実施が必要になります。

2.利用者、ご家族からの相談対応

施設を利用する際のアセスメント(面談、ヒアリング)において、利用者の困りごとを確認します。個別支援計画の策定に際しては、たとえばリハビリの効果、今後の支援方針などについて説明を行います。

3.施設内のチームマネジメント、人材育成

サービス管理責任者は「施設で実施される障害福祉サービスの管理者」という役割を担います。そのため「国が定めるガイドラインに則ったサービスが提供できているか」「法令違反が無いか」など施設全体のサービスをチェックし、管理をすることも仕事の一つです。

人材育成という側面では、事業所内で行う研修(OJTを含む)の立案・計画・実施、外部研修への参加促進、資格取得の促進など、施設全体としてサービスレベルを向上させるための取り組みを行います。他には、職員との個別支援会議を実施する中で、個別支援計画の進捗確認や職員へのサポートも担当します。

4.地域の関係機関との連携窓口

利用者やご家族が、お住いの地域で必要な支援を受けられるように、市役所などの行政機関や医療機関との連携を担当します。関係機関と施設の間で連携に問題がある場合、利用者が適切な支援が受けられないなど不利益が生じることもあり得ます。サービス管理責任者は専門的な知識だけではなく、さまざまな関係者と円滑にコミュニケーションが取れるスキルも求められています。

サービス管理責任者になるには

児童発達支援管理責任者になるには、まず、「実務経験の要件」を満たした上で、各都道府県ごとに実施される「研修」の下記1~3を修了する必要があります。

実務経験の要件について

実務経験は以下のいずれかを満たす必要があります。

①相談支援業務:5年以上(3年あれば基礎研修は受講可)※相談支援業務とは、障害のある方の相談支援(医療機関、教育機関など)

②直接支援業務:8年以上(6年あれば基礎研修は受講可)※直接支援業務とは障害のある方の介護、教育など(医療機関、介護施設など)

③国家資格などの有資格者:3年以上 ※国家資格とは医師、看護師、社会福祉士など。当該国家資格に係る業務に従事した期間が3年以上ある者

※上記①~③ともに、老人福祉施設、介護老人保健施設、地域包括支援センター等の経験年数から除外される施設での業務期間を除いた期間が3年以上必要です。

※年間勤務日数「180日以上」の勤務がある場合に「1年」とカウントします。

(出典)「サービス管理責任者研修・児童発達支援管理責任者研修 研修制度について(東京都心身障害者福祉センター 地域支援課 地域支援担当)」

1.基礎研修26時間(相談支援従事者初任者研修11時間、サービス管理責任者等基礎研修15時間)

基礎研修は、実務経験要件を満たす予定の2年前から受講ができます。 例えば、相談支援業務:原則は5年間の実務経験が必要ですが、実務経験が3年あれば基礎研修は受講できます。

基礎研修の内容は下記になります。

  • 相談支援従事者初任者研修講義部分(11時間)
  • サービス管理責任者の基本姿勢とサービス提供のプロセスに関する講義(7.5時間)
  • サービス提供プロセスの管理に関する演習(7.5時間)

研修受講を申込みの際、下記にご注意ください。

  • 研修の申し込み時期、開催時期は都道府県によって異なります。
  • 申し込みは基本的に事業所からの推薦(事業所からの申し込み)が必要です。
  • 研修費用が無償か、有償かは都道府県によって異なる。東京都は無償で受講が可能となっていますが、神奈川県では基礎研修と実践研修を合わせて約5万円の研修費用が掛かるなど違いがあります。

2.OJT2年間

OJT2年間では、サービス管理責任者の一部業務を担いながら実務経験を積んでいきます。OJT期間中にサービス管理責任者ができる業務は以下になります。

  • 既にサービス管理責任者が1名配置されている場合、基礎研修修了者は2人目のサービス管理責任者として配置することができます。
  • 実務経験が2年に満たない基礎研修修了者も、個別支援計画原案の作成できます。

原則2年間のOJTが必要ですが、下記①~③の条件を満たした場合は6か月間に短縮されることもあります。

①基礎研修受講開始時に既にサービス管理責任者等の配置に係る実務経験要件(相談支援業務又は直接支援業務3~8年)を満たしている。

② 実践研修の受講要件である実務経験(OJT)として、障害福祉サービス事業所等において、個別支援計画作成の業務に従事する。 具体的には、サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者(以下「サービス管理責任者等」という。)の配置を必要とする障害福祉サービス事業所等に従業者として配置を届け出ている者について、以下のいずれかに該当する。

㋐ サービス管理責任者等のもとで基礎研修修了者が個別支援計画の原案の作成までの一連の業務を行う(利用者へ面接の上アセスメントを実施、個別支援計画の原案を作成、サービス管理責任者等が開催する個別支援計画の作成に係る会議への参画(モニタリング含む)※)に従事する場合。 ㋑ やむを得ない事由によりサービス管理責任者等を欠いている事業所等において、サービス管理責任者等の配置に係る実務経験要件を満たしている者(実務経験者)がサービス管理責任者等とみなして個別支援計画の作成の一連の業務(利用者へ面接の上アセスメントを実施、個別支援計画の原案を作成、個別支援計画の作成に係る会議の開催、個別支援計画の原案の内容について利用者又はその家族に説明し、個別支援計画を交付(モニタリング含む)※)に従事する場合。 ㋒ 令和3年度末までに、実務経験者が基礎研修修了者となっており(経過措置対象者)、サービス管理責任者等とみなして個別支援計画の作成の一連の業務(㋑と同様)に従事する場合。

③ 上記業務に従事することについて、指定権者に届出を行う。

3.実務研修14.5時間

基礎研修の内容は下記になります。

  • 障害福祉の動向に関する講義(1時間)
  • サービス提供に関する講義及び演習(6.5時間)
  • 人材育成の手法に関する講義及び演習(3.5時間)
  • 多職種及び地域連携に関する講義及び演習(3.5時間)

以上1~3までの流れでサービス管理責任者の資格を取得できますが、サービス管理責任者は5年ごとに更新研修を受ける必要があります。

更新研修13時間について

更新研修は5年ごとに受講しなければなりませんが、受講するにあたり下記①②の要件を満たす必要があります。

①過去5年間に2年以上の相談支援または直接支援の実務経験がある

②現にサービス管理責任者として従事している

サービス管理責任者の就業場所

サービス管理責任者の就業先は「入所型事業所」「通所型事業所」「就労支援型事業所」の3種類に分類されます。事業所種別ごとにサービスの内容をご説明します。

①入所型事業所

(1)施設入所支援

障害者支援施設に入所している障害者が対象。主に夜間において、入浴、排泄及び食事等などの介護、生活に関する相談及び助言、その他の必要な日常生活上の支援を行います。

(2)共同生活援助(グループホーム)

共同生活をしている障害者が対象。介護や日常生活の支援を行う。

(3)療養介護

医療機関に入院している障害者が対象です。身体介護、機能訓練、療養上の管理を行う。

(4)宿泊型自立訓練

自立訓練(生活訓練)の対象者のうち、日中、一般就労や障害福祉サービスを利用する方であって、地域移行に向けて一定期間、居住の場を提供している。知的障害や身体障害のある入居者に対して、日常生活の能力向上のための支援を行います。

②通所型事業所

(1)生活介護(デイサービス)

障害者支援施設を通所で利用している方が対象です。介護や生活援助を行います。

(2)自立訓練(機能訓練、生活訓練)

障害者や難病の方が対象です。リハビリや生活に関する相談及び助言、その他の必要な支援を行います。

③就労支援型事業所

(1)就労移行支援事業所

65歳未満で一般企業への就労を希望するかたが対象です。就労に必要なスキルの指導や就職活動の支援を行います。

(2)就労定着支援

就労移行支援により一般就労へ移行した際、生活面で課題が生じている障害者が対象です。就労の継続を図るための支援や指導、相談、助言などを一定期間行います。

(3)就労継続支援A型事業所(雇用型)

通常の事業所での雇用は困難な方が対象です。雇用契約に基づく就労が可能な方に対して、就労や生産活動の機会を提供、また就労に必要な支援を行います。

(4)就労継続支援B型事業所(非雇用型)

通常の事業所での雇用は困難、かつ雇用契約に基づく就労も困難な方が対象です。就労や生産活動の機会を提供、また就労に必要な支援を行います。

サービス管理責任者の市場価値と将来性

サービス管理責任者になるためには「実務経験の要件」を満たし、研修を終了する必要があることは前述いたしました。しかしながら、せっかく時間を掛けて資格を取得しても、働く場所が無ければ取得する意味が薄れてしまいます。サービス管理責任者が働く施設の設置状況、サービス管理責任者の配置状況について見てみたいと思います。

児童福祉・障害福祉事業所の施設数

サービス管理責任者の配置義務がある施設数の推移ですが、厚生労働省の調査によると、施設数は増加傾向にあります。

(参考)「障害福祉サービス等事業所・障害児通所支援等事業所の状況(厚生労働省)令和4年度」

サービス管理責任者の配置状況は?

今後も障害福祉事業所が増加することにより、サービス管理責任者に求められる期待は高まっていくことでしょう。サービス管理責任者は、専門職として責任も大きいです。今後も障害者支援サービスの中心的な人材として、さらなる活躍が期待されています。