「障害のある子どもに長く寄り添える仕事がしたい」・「療育をリードする役割を担いたい」・「自分で個別支援計画を作って、子どもの発達を支援したい」このような方は、児童発達支援管理責任者の資格に興味をお持ちなのではないでしょうか。この記事では「児童発達支援管理責任者とは?」・「児童発達支援管理責任者の業務内容」・「児童発達支援管理責任者になるための方法」・「児童発達支援管理責任者の就業場所」について解説いたします。
児童発達支援管理責任者とは?
児童発達支援管理責任者は、児童福祉法に定められた施設(児童発達支援、放課後等デイサービスなど)に必ず1名の配置が義務付けられている専門職です。個別支援計画の作成、児童やご家族からの相談支援、指導員の育成や地域の関係機関との連携窓口役を担っています。
資格を取得するためには「実務経験の要件」を満たした上で、各都道府県で実施される「研修(基礎研修、実践研修)」を修了する必要があります。
児童発達支援管理責任者の業務内容
児童発達支援管理責任者には主に4つの業務がありますが、担当する主な業務は「個別支援計画の作成」・「ご家族からの相談対応」・「指導員の育成、サポート」・「地域の関係機関との連携窓口」になります。
1.個別支援計画の作成
発達障がいなどの障害のある、またはその可能性がある子どもの発達支援を目的とした個別支援計画の作成・実施・見直しなどを行います。子ども一人ひとりの発育の様子を観察し、短期的、長期的な計画を立てていきます。計画は子どもの成長、変化に合わせて見直しを行い、最適な療育プログラムを提供していきます。なお、個別支援計画の作成には本人、保護者の同意が必要なため、定期的な面談の実施も不可欠な業務です。
2.ご家族からの相談対応
施設を利用する際のアセスメント(面談、ヒアリング)において、発育歴や困りごと、苦手なこと、得意なことを確認します。個別支援計画の策定に際しては、支援方針やプログラムの効果などについて説明を行います。
3.指導員の育成、サポート
施設の指導員(保育士、介護福祉士、言語聴覚士、理学療法士など)への指導を行います。個別支援計画の進捗確認や指導員との個別支援会議の実施、他には利用者へのモニタリングを通して、課題解決の為の支援を行います。
4.地域の関係機関との連携窓口
児童やご家族がお住いの地域で必要な支援を受けられるように、市役所などの行政機関や教育機関(保育園、幼稚園、小中学校など)との連携を行います。事業所によっては教育機関(保育園、幼稚園、小中学校など)への訪問サービスを行っており、集団生活での様子を確認し、生活上で困難を感じている点を支援します。
児童発達支援管理責任者になるには
児童発達支援管理責任者になるには、まず、「実務経験の要件」を満たした上で、都道府県で実施される「研修」の下記1~3を修了する必要があります。
実務経験の要件について
実務経験は以下のいずれかを満たす必要があります。
①相談支援業務:5年以上(3年あれば基礎研修は受講可)※相談支援業務とは、障害のある方の相談支援(医療機関、教育機関など)
②直接支援業務:8年以上(6年あれば基礎研修は受講可)※直接支援業務とは障害のある方の介護、教育など(医療機関、介護施設など)
③国家資格などの有資格者:3年以上 ※国家資格とは医師、看護師、社会福祉士など。当該国家資格に係る業務に従事した期間が3年以上ある者
※上記①~③ともに、老人福祉施設、介護老人保健施設、地域包括支援センター等の経験年数から除外される施設での業務期間を除いた期間が3年以上必要です。
※年間勤務日数「180日以上」の勤務がある場合に「1年」とカウントします。
(出典)「サービス管理責任者研修・児童発達支援管理責任者研修 研修制度について(東京都心身障害者福祉センター 地域支援課 地域支援担当)」
1.基礎研修26時間(相談支援従事者初任者研修11時間、サービス管理責任者等基礎研修15時間)
基礎研修は、実務経験要件を満たす予定の2年前から受講ができます。 例えば、相談支援業務:原則は5年間の実務経験が必要ですが、実務経験が3年あれば基礎研修は受講できます。
基礎研修の内容は下記になります。
- 相談支援従事者初任者研修講義部分(11時間)
- 児童発達支援管理責任者の基本姿勢とサービス提供のプロセスに関する講義(7.5時間)
- サービス提供プロセスの管理に関する演習(7.5時間)
研修受講を申込みの際、下記にご注意ください。
- 研修の申し込み時期、開催時期は都道府県によって異なります。
- 申し込みは基本的に事業所からの推薦(事業所からの申し込み)が必要です。
- 研修費用が無償か、有償かは都道府県によって異なる。東京都は無償で受講が可能となっていますが、神奈川県では基礎研修と実践研修を合わせて約5万円の研修費用が掛かるなど違いがあります。
2.OJT2年間
OJT2年間では、児童発達支援管理責任者の一部業務を担いながら実務経験を積んでいきます。OJT期間中に児童発達支援管理責任者ができる業務は以下になります。
- 既に児童発達支援管理責任者が1名配置されている場合、基礎研修修了者は2人目の児童発達支援管理責任者として配置することができます。
- 実務経験が2年に満たない基礎研修修了者も、個別支援計画原案の作成できます。
原則2年間のOJTが必要ですが、下記①~③の条件を満たした場合は6か月間に短縮されることもあります。
①基礎研修受講開始時に既にサービス管理責任者等の配置に係る実務経験要件(相談支援業務又は直接支援業務3~8年)を満たしている。
② 実践研修の受講要件である実務経験(OJT)として、障害福祉サービス事業所等において、個別支援計画作成の業務に従事する。 具体的には、サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者(以下「サービス管理責任者等」という。)の配置を必要とする障害福祉サービス事業所等に従業者として配置を届け出ている者について、以下のいずれかに該当する。
㋐ サービス管理責任者等のもとで基礎研修修了者が個別支援計画の原案の作成までの一連の業務を行う(利用者へ面接の上アセスメントを実施、個別支援計画の原案を作成、サービス管理責任者等が開催する個別支援計画の作成に係る会議への参画(モニタリング含む)※)に従事する場合。 ㋑ やむを得ない事由によりサービス管理責任者等を欠いている事業所等において、サービス管理責任者等の配置に係る実務経験要件を満たしている者(実務経験者)がサービス管理責任者等とみなして個別支援計画の作成の一連の業務(利用者へ面接の上アセスメントを実施、個別支援計画の原案を作成、個別支援計画の作成に係る会議の開催、個別支援計画の原案の内容について利用者又はその家族に説明し、個別支援計画を交付(モニタリング含む)※)に従事する場合。 ㋒ 令和3年度末までに、実務経験者が基礎研修修了者となっており(経過措置対象者)、サービス管理責任者等とみなして個別支援計画の作成の一連の業務(㋑と同様)に従事する場合。
③ 上記業務に従事することについて、指定権者に届出を行う。
3.実務研修14.5時間
基礎研修の内容は下記になります。
- 障害福祉の動向に関する講義(1時間)
- サービス提供に関する講義及び演習(6.5時間)
- 人材育成の手法に関する講義及び演習(3.5時間)
- 多職種及び地域連携に関する講義及び演習(3.5時間)
以上1~3までの流れで児童発達支援管理責任者の資格を取得できますが、児童発達支援管理責任者は5年ごとに更新研修を受ける必要があります。
更新研修13時間について
更新研修は5年ごとに受講しなければなりませんが、受講するにあたり下記①②の要件を満たす必要があります。
①過去5年間に2年以上の相談支援または直接支援の実務経験がある
②現に児童発達支援管理責任者として従事している
児童発達支援管理責任者の就業場所
児童発達支援管理責任者の主な就業先は「児童発達支援」・「放課後等デイサービス」の通所型施設になりますが、近年、「保育所等訪問支援」・「居宅訪問型児童発達支援」など事業所で就業する方も増えております。主な就業先の「児童発達支援」・「放課後等デイサービス」事業所の違いは以下の通りです。
- 「児童発達支援」:未就学児(6歳以下)が対象
- 「放課後等デイサービス」:6歳以上18歳以下が対象
障害児支援サービスを提供する施設数は「児童発達支援(56.1%)」「放課後等デイサービス(32.9%)」が全体の約9割を占めていることもあり、必然的に就業先の選択肢に入る方が多いと思います。
(参考)「障害福祉サービス等事業所・障害児通所支援等事業所の状況(厚生労働省)令和3年度 」
児童発達支援管理責任者の市場価値と将来性
児童発達支援管理責任者になるためには「実務経験の要件」を満たし、研修を終了する必要があることは前述いたしました。しかしながら、せっかく時間を掛けて資格を取得しても、働く場所が無ければ取得する意味が薄れてしまいます。児童発達支援管理責任者が働く障害児支援の施設の設置状況、児童発達支援管理責任者の配置状況について説明します。
障害児支援を行う施設数は増加傾向にある
児童発達支援管理責任者の配置義務がある「児童発達支援」「放課後等デイサービス」の施設数の推移ですが、厚生労働省の調査によると、少子化にもかかわらず、支援を必要とする児童数が増加しているため、施設数も比例して増加傾向にあります。
(参考)「障害福祉分野の最近の動向(厚生労働省)令和4年3月28日」
(参考)「障害福祉サービス等事業所・障害児通所支援等事業所の状況(厚生労働省)令和3年度 」
児童発達支援管理責任者の配置状況は?
施設数の増加と合わせ、障害児支援施設における児童発達支援管理責任者についても、年々増えています。障害児支援の専門職として、児童発達支援管理責任者の果たす役割の重要性を考えると、今後も労働市場での需要が高まっていくことが予想されます。
児童発達支援管理責任者は、社会生活に困難さを抱える子供達に寄り添い、個別支援計画の作成を通じて、子供の成長を身近で感じることのできることが魅力の一つです。また、子供だけではなく、そのご家族と一緒に課題を乗り越えることで成長を共有することもできます。専門職として責任も大きいですが、その分、やりがいも大きい専門職です。社会生活に困難さを抱える子供達に必要な支援を届けるために、児童発達支援管理責任者への期待は、今後もますます高まっていくことでしょう。
この記事の監修者 特定行政書士 宗方 健宏 行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。障害福祉事業所と医療法人は、設立~運営までサポートしております。障害福祉事業所は、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。 |