障害者総合支援法や児童福祉法における受給者証には、どのような役割があるのでしょうか。障害者や障害児の保護者へ説明するためにも、受給者証について理解しておくことが重要です。ただ、受給者証について詳しく理解している障害福祉・児童福祉関係者は、少ないかもしれません。受給者証について詳しく理解することは、障害福祉・児童福祉制度の理解につながるとも言えます。本記事では、受給者の役割や障害者手帳との違い、取得方法などについて解説します。

障害者総合支援法・児童福祉法の受給者証とは

まずは受給者証そのものについて解説します。

福祉サービスを利用するために必要

受給者証とは、支給量(提供する福祉サービスの量)を決定した都道府県 や区市町村が、本人の情報や支給量などを記載した証明書です。障害者・障害児の保護者が福祉サービスの利用申請を行い、自治体による審査の結果、福祉サービスの利用の可否やその支給量が決定します。支給量が記載されるということは、福祉サービスの提供が決定したことを意味するので、福祉サービスを利用するために必要な証明書と言えます。

なお、福祉サービスの利用申請先や受給者証の交付は、申請者の住民票がある都道府県や区市町村です。

受給者証と療育手帳・身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳の違い

「受給者証と療育手帳の違いがわからない」と思われる方がいるかもしれません。受給者証は前述のとおり福祉サービスを利用するために必要な証明書です。一方、療育手帳をはじめとした各種の障害者手帳には以下のような役割があります。

  • 療育手帳:療育手帳制度にもとづく知的障害者であることの証明書(呼称は都道府県によってさまざま)
  • 身体障害者手帳:身体障害者福祉法にもとづく身体障害者であることの証明書
  • 精神障害者保健福祉手帳:精神保健及び精神障害者福祉に関する法律にもとづく精神障害者であることの証明書

療育手帳は、東京都では「愛の手帳」、埼玉県では「みどりの手帳」と呼ばれているように、独自の名称を使用している都道府県があります。

なお、平成16年に発達障害者支援法が施行されましたが、同法にもとづき発達障害者を証明する障害者手帳はありません。

障害者総合支援法・児童福祉法の受給者証の記載内容

ここでは受給者証の記載されている内容について解説します。

最初のページには居住地・氏名などが記載

受給者証の最初のページには障害者・障害児本人の情報が記載されています。記載されている主な項目は以下のとおりです。

  • 受給者証番号
  • 居住地
  • 氏名
  • 障害種別(1:身体障害者・児、2:知的障害者・児、3:精神障害者・児、4・5:難病等対象者・児)
  • 交付年月日

画像引用元:厚生労働省 介護給付費等に係る支給決定事務等の事務処理要領 様式第11号 障害福祉サービス受給者証

支給量は福祉サービスを利用できる日数・時間

受給者証の2ページ以降は、支給決定内容や事業者記入欄、注意事項欄などのページがあります。ここでは支給決定内容について詳しく解説します。支給決定内容のページでは、以下の項目が記載されています。

  • 障害支援区分
  • 認定有効期間
  • サービス種別
  • 支給量等
  • 支給決定期間
  • 予備欄

支給量等では福祉サービスを利用できる日数・時間などが、「〇日/月」や「〇時間/月」のように記載されます。福祉サービスは決定された支給量の範囲内でしか利用できません。

画像引用元:厚生労働省 介護給付費等に係る支給決定事務等の事務処理要領 様式第11号 障害福祉サービス受給者証

利用者負担上限月額とは

利用者負担に関する事項のページでは、負担上限額や利用者負担上限額管理事業所名などが記載されています。負担上限額とは、福祉サービスを利用する際に発生する自己負担の上限額で、利用者は負担上限額を超えて利用料を負担する必要はありません。利用している事業所は負担上限額を超えて利用料を請求しません。しかし、利用する事業所が二つ以上になった場合、事業所が自分のところで発生した利用料を利用者に請求し、何もしないと利用料の合計額が負担上限月額を超えてしまうことも考えられます。そのため、負担上限月額を超えて請求することがないように、利用者の利用料を管理する事業所が必要です。この利用料を管理する事業所を利用者負担上限額管理事業所と言います。

画像引用元:厚生労働省 介護給付費等に係る支給決定事務等の事務処理要領 様式第11号 障害福祉サービス受給者証

受給者証の種類

ここでは、障害者総合支援法各法と児童福祉法の各法における受給者証の種類について解説します。

障害者総合支援法における受給者証

障害者総合支援法における受給者証には、障害福祉サービス受給者証や地域相談支援受給者証などがあります。

障害福祉サービス受給者証は、障害福祉サービスを利用する際に必要な証明書です。障害者福祉サービスには、居宅介護や行動援護、短期入所(ショートステイ)などの福祉サービスがあります。

一方、地域相談支援受給者証は地域相談支援を利用する際に必要な証明書です。地域相談支援には地域移行支援や地域定着支援があります。

なお、移動支援や日中一時支援などの地域生活支援事業を利用する際も受給者証が必要です。区市町村の事業であるため、区市町村が発行する独自の受給者証が交付されます。

児童福祉法における受給者証

児童福祉法における受給者証には、通所受給者証や入所受給者証などがあります。

通所受給者証は障害児通所支援を利用する際に必要な証明書です。障害児通所支援には児童発達支援や放課後等デイサービス、保育所等訪問支援などの福祉サービスがあります。

一方、入所受給者証は障害児入所支援を利用する際に必要な証明書です。障害児入所支援とは障害児入所施設に入所し治療を受ける支援です。障害児入所施設には福祉型障害児入所施設と医療型障害児入所施設の二種類の施設があります。

障害者相総合支援法・児童福祉法以外の受給者証

ここまで障害者総合支援法や児童福祉法の受給者証について解説してきました。ただ、受給者証と名称がつくものは、この二つの法制度だけではありません。障害者総合支援法・児童福祉法以外の受給者証には以下のようなものがあります。

  • 特定医療費(指定難病)受給者証:指定難病を発症し治療が必要な方が都道府県・指定都市から交付される受給者証
  • 小児慢性特定疾病医療受給者証:小児慢性特定疾病を発症し治療が必要な方が都道府県・指定都市・中核都市などから交付される受給者証
  • 自立支援医療受給者証:知的障害やてんかん、うつ病などの精神疾患を発症し治療が必要な方が区市町村から交付される受給者証

障害者・障害児の福祉サービスとも関連性があるため、理解したほうがよいでしょう。

受給者証の取得方法

最後は受給者証の取得方法について解説します。受給者証は障害者・障害児へ自動的に交付されるものではありません。障害者や障害児の保護者が、住民票のある都道府県・区市町村の障害福祉窓口で福祉サービスの利用を申請します。申請を受けた都道府県・区市町村は提出されたサービス等利用計画案・障害児支援利用計画案の勘案や意見聴取を行い、支給決定や受給者証の交付を行います。障害者総合支援法・児童福祉法福祉サービスを実際に利用するためには、計画案ではなく正式なサービス等利用計画や障害児支援利用計画の作成が必要です。

福祉サービスと利用者をつなげるために障害者総合支援法・児童福祉法における受給者証を理解する

受給者証は、障害者総合支援法・児童福祉法の福祉サービスを利用するために必要な証明書です。受給者証は福祉サービスの利用に関係しますが、障害者であることを証明する障害者手帳とは役割が異なります。受給者証の記載内容は、障害者・障害児本人の情報や支給決定内容などです。受給者証の種類は、障害者総合支援法では障害福祉サービス受給者証や地域相談支援受給者証などが、児童福祉法では通所受給者証や入所受給者証などがあります。受給者証は障害者・障害児へ自動的に交付されず、都道府県・区市町村へ申請が必要です。受給者証について正しく理解し、福祉サービスと障害者・障害児の架け橋となりましょう。

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この記事の監修者 
特定行政書士 宗方 健宏

行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。医療法人設立は、日々の診療で多忙な医師に変わり、設立から運営までサポートしております。障害福祉事業所の立ち上げ・運営コンサルティングは、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。