在留資格「特定技能1号」は、人手不足が深刻な産業分野において、一定の知識や経験を持つ外国人が働くための在留資格です。
特定技能1号で外国人を採用するためには、外国人本人が技能・日本語能力の要件を満たしているだけではなく、受入れ企業についても一定の基準を満たし、適切な雇用契約を締結する必要があります。
さらに、特定技能1号では、外国人が日本で安定して働き、生活するための「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、必要な支援を行うことが会社に求められます。
本記事では、特定技能1号の対象分野、外国人本人の要件、在留期間、家族帯同、雇用条件、支援計画、登録支援機関などについて解説します。
特定技能1号とは
特定技能1号は、特定産業分野において、相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人を対象とした在留資格です。
必ずしも大学や専門学校を卒業している必要はなく、分野ごとの技能試験や日本語試験などによって、仕事に必要な技能と日本語能力を有していることを確認します。
そのため、学歴を中心に審査する「技術・人文知識・国際業務」とは、在留資格の考え方が異なります。
特定技能1号の対象分野
特定技能制度では、2026年現在、19の特定産業分野が定められています。
対象となるのは、介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、資源循環です。
ただし、新規分野については実際の受入れ開始時期が異なる場合がありますので、採用を検討する際には最新の分野別運用状況を確認する必要があります。
また、同じ分野であっても業務区分が分かれている場合があり、外国人が合格した技能試験と、実際に担当させる仕事が対応しているかを確認することが重要です。
技能試験と日本語試験
特定技能1号を取得するためには、原則として、外国人本人が分野ごとの技能試験と日本語能力を確認する試験に合格する必要があります。
日本語については、一般的には国際交流基金日本語基礎テストや日本語能力試験N4以上などが基準となりますが、分野や業務によって、より高い日本語能力や追加の試験が必要となる場合があります。
例えば、仕事内容によっては利用者や顧客とのコミュニケーション能力が特に重要となるため、分野独自の日本語要件が定められています。
したがって、外国人が「N4を持っているから特定技能になれる」と単純に判断するのではなく、希望する分野・業務区分の要件を確認する必要があります。
技能実習2号を修了した場合
技能実習2号を良好に修了した外国人については、技能実習で修得した技能と、特定技能で従事する予定の業務との関連性が認められる場合、技能試験や日本語試験が免除されることがあります。
ただし、技能実習2号を修了していれば、どの特定技能分野にも試験なしで変更できるという意味ではありません。
技能実習の職種・作業と、特定技能で予定している業務との対応関係を確認することが重要です。
特定技能1号の在留期間
特定技能1号として在留できる期間は、原則として通算5年以内です。
2026年現在、1回の在留許可については、法務大臣が外国人ごとに3年を超えない範囲で期間を指定します。
したがって、特定技能1号を取得したからといって、最初から5年間の在留が認められるわけではありません。
在留期間が満了する前に必要に応じて更新許可申請を行い、通算在留期間の範囲内で就労を続けることになります。
家族を日本へ呼ぶことはできる?
特定技能1号では、原則として配偶者や子を「家族滞在」で日本へ呼び寄せることは認められていません。
この点は、特定技能2号との大きな違いの一つです。
将来的に家族と一緒に日本で長期間生活したいと考えている外国人の場合には、2号への移行が可能な分野であれば、特定技能2号を長期的なキャリアとして検討することも重要になります。
特定技能外国人の給与
特定技能外国人だからという理由で、日本人より低い給与を設定することはできません。
特定技能雇用契約では、外国人に対する報酬額が、同等の業務に従事する日本人の報酬額と同等以上であることが求められています。
また、労働時間や休暇などについても、労働関係法令を遵守した適正な条件で雇用する必要があります。
外国人本人やその家族などから保証金を徴収したり、途中退職などについて違約金を定める契約を締結したりすることも認められていません。
受入れ企業にも要件がある
特定技能1号では、外国人本人だけでなく、受入れ企業についても審査されます。
例えば、労働関係法令、社会保険関係法令、税法などを遵守していること、外国人を適切に受け入れる体制があること、特定技能雇用契約を適正に履行できることなどが確認されます。
また、会社都合による一定の離職者の発生状況や、外国人の行方不明者の発生状況などについても確認されます。
さらに、対象分野によっては協議会への加入や、事業者としての許可・認定などが必要となるため、採用を決定する前に会社側の要件を確認しておくことが重要です。
1号特定技能外国人支援計画とは
特定技能1号外国人を受け入れる会社は、外国人が日本で安定して生活し、円滑に就労できるよう「1号特定技能外国人支援計画」を作成する必要があります。
支援計画は在留資格の申請時にも提出する重要な書類であり、計画を作成するだけでなく、その内容に従って実際に外国人を支援しなければなりません。
義務的支援の主な内容
1号特定技能外国人に対する支援には、主に次の10項目があります。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約の支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 会社都合等による場合の転職支援
- 定期的な面談・必要に応じた行政機関への通報
外国人が理解できる言語で必要な説明や相談対応を行うことも重要です。
登録支援機関へ委託できる
会社自身で支援を行うことが難しい場合には、登録支援機関へ支援業務を委託することができます。
支援計画の全部を登録支援機関へ委託した場合には、受入れ企業が満たす必要のある支援体制について、一定の基準を満たしたものとして扱われます。
初めて外国人を採用する会社や、外国語での相談対応、生活支援、定期面談などを自社だけで行うことが難しい会社では、登録支援機関を利用することが考えられます。
会社自身で支援を行う場合
登録支援機関の利用は、すべての受入れ企業に義務付けられているわけではありません。
会社自身が必要な支援体制を有し、法令で求められている支援を適切に実施できるのであれば、自社支援も可能です。
ただし、自社支援を行う場合には、過去の外国人受入れ・管理実績、支援責任者・支援担当者の配置、外国人が十分理解できる言語での相談体制など、必要な基準を満たしているかを確認する必要があります。
地域との共生施策と協力確認書
2025年4月から、特定技能外国人を受け入れる企業には、地方公共団体の共生施策との連携が求められています。
初めて特定技能外国人を受け入れる場合には、特定技能雇用契約を締結した後、在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請を行う前に、外国人が働く事業所の所在地と住居地が属する市区町村へ「協力確認書」を提出する必要があります。
また、地方公共団体が実施する共生施策を確認し、その内容を踏まえて支援計画を作成・実施することも求められます。
特定技能1号から2号を目指す
2号の対象となっている分野では、特定技能1号として働きながら実務経験を積み、より高い技能を身につけることで、将来的に特定技能2号を目指すことができます。
特定技能2号へ移行すれば、通算5年という在留期間の上限がなくなり、一定の要件を満たせば配偶者や子を日本へ呼び寄せることもできます。
ただし、1号として5年間働けば自動的に2号になるわけではないため、必要な技能試験や実務経験を早い段階から確認しておくことが重要です。
当事務所のサポート
当事務所では、特定技能1号外国人を採用する企業について、外国人本人の試験・経歴確認、会社側の受入れ要件、特定技能雇用契約、支援体制、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請などに対応しております。
初めて特定技能外国人を採用する会社についても、採用前の段階から必要となる手続きを確認し、受入れまでの流れを整理したうえでサポートいたします。
