在留資格「技術・人文知識・国際業務」などで働いている外国人が転職した場合、勤務先が変わっただけで直ちに在留資格を変更しなければならないとは限りません。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の外国人が転職し、新しい会社でも同じ在留資格の範囲内の仕事を行うのであれば、現在の在留資格のまま働くことができる場合があります。ただし、転職したときには、原則として契約終了や新しい会社との契約締結について14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る必要があります。
また、新しい会社で行う仕事が現在の在留資格で認められるか不安な場合には、就労資格証明書交付申請を行い、転職後の仕事内容が在留資格の範囲内であることを確認する方法があります。特に「技術・人文知識・国際業務」は、在留資格の名称が同じでも、転職後の仕事内容によっては現在の在留資格で働けない場合があります。
本記事では、外国人が転職したときに必要となる所属機関に関する届出、就労資格証明書、在留資格変更や更新との違いについて解説します。
- 1. 外国人が転職した場合に確認すること
- 2. 転職しても在留資格が自動的に変わるわけではない
- 3. 所属機関に関する届出とは
- 4. 退職したときも14日以内の届出が必要
- 5. 新しい会社に転職したときも届出が必要
- 6. 届出は外国人本人が行います
- 7. 届出の方法
- 8. 就労資格証明書とは
- 9. 就労資格証明書は必ず取得する必要がある?
- 10. 転職時に就労資格証明書を取得するメリット
- 11. 技人国では転職後の仕事内容が重要
- 12. 就労資格証明書ではどのような内容が確認される?
- 13. 在留期限が近い場合は更新申請を検討
- 14. 仕事内容が変わる場合は在留資格変更が必要なことも
- 15. 転職後に届出をしていなかった場合
- 16. 外国人を採用する会社が確認したいポイント
- 17. 当事務所のサポート
外国人が転職した場合に確認すること
外国人が転職するときは、日本人の転職とは異なり、現在持っている在留資格と新しい仕事との関係を確認する必要があります。
特に確認したいのは、次の3点です。
1.転職に伴う所属機関に関する届出が必要か
2.新しい会社で行う仕事が現在の在留資格の範囲内か
3.就労資格証明書を取得した方がよいか
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っている外国人が、前職ではシステムエンジニアとして勤務しており、転職先でもシステム開発を担当する場合があります。
この場合、仕事内容が「技術・人文知識・国際業務」の範囲内であれば、転職したことだけを理由として在留資格変更許可申請を行う必要はありません。
一方、転職先で担当する仕事が現在の在留資格の活動内容から外れる場合には、在留資格変更許可申請が必要となることがあります。出入国在留管理庁も、転職後の活動が現在の在留資格に基づく活動と変わらない場合は更新、活動自体が変わる場合には在留資格変更が必要としています。
転職しても在留資格が自動的に変わるわけではない
「会社が変わったら、新しい就労ビザを取り直す必要があるのですか?」というご質問をいただくことがあります。
「技術・人文知識・国際業務」などでは、在留資格は特定の会社そのものに対して与えられているわけではありません。
そのため、会社を退職して新しい会社へ転職しただけで、現在の在留資格が直ちに無効になるわけではありません。しかし、現在持っている在留資格で認められている活動の範囲は決まっています。
例えば、技術・人文知識・国際業務であれば、
- システム開発
- 設計
- 経理
- 貿易業務
- マーケティング
- 海外営業
- 通訳・翻訳
など、専門的な知識や技術、外国文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務が対象となります。転職後の仕事が、この在留資格で認められる活動に該当することが必要です。
所属機関に関する届出とは
「技術・人文知識・国際業務」など一定の在留資格を持つ外国人は、勤務先との契約に変更があった場合、出入国在留管理庁へ届出を行う必要があります。
技術・人文知識・国際業務の場合、正式には**「所属(契約)機関に関する届出」**です。
対象となる主な在留資格には、次のようなものがあります。
- 技術・人文知識・国際業務
- 研究
- 介護
- 技能
- 特定技能
- 一定の高度専門職
- 一定の興行
例えば、次の場合に届出が必要になります。
- 会社を退職した
- 転職して新しい会社と契約した
- 勤務先の会社名が変わった
- 勤務先の所在地が変わった
- 勤務先の会社が消滅した
これらの事由が発生した場合は、原則として14日以内に届け出ます。
退職したときも14日以内の届出が必要
転職というと、新しい会社に入社した後の手続きだけを考えがちですが、前の会社を退職した場合にも届出が必要です。
例えば、
A社を8月31日で退職
↓
B社と9月10日に新たな契約を締結
という場合には、A社との契約終了とB社との新たな契約について、それぞれ届出の対象となります。
「新しい会社に入社してからまとめて考えればよい」というわけではなく、契約終了又は新たな契約締結という届出事由が発生してから14日以内という点に注意が必要です。
新しい会社に転職したときも届出が必要
新しい会社と雇用契約を締結した場合も、所属(契約)機関に関する届出を行います。
ここで注意したいのは、
届出をした=新しい会社での仕事内容について入管から許可を受けた
という意味ではないことです。
所属機関に関する届出は、勤務先が変わったことなどを出入国在留管理庁へ知らせる手続きです。新しい会社で担当する仕事内容が現在の在留資格の範囲内であるかを審査して許可する手続きではありません。
この違いは非常に重要です。転職後の仕事内容が現在の在留資格に該当するか確認したい場合には、就労資格証明書交付申請を検討します。
届出は外国人本人が行います
所属(契約)機関に関する届出は、原則として外国人本人が行う届出です。会社が外国人に代わって自動的に行ってくれる手続きではありません。
そのため、外国人本人が、
「前の会社を辞めた」
「新しい会社に転職した」
という場合には、自分自身の入管上の手続きも確認する必要があります。なお、外国人を雇用する企業側には、外国人雇用状況の届出など別の手続きがあります。外国人本人が行う入管への届出と、会社が行うハローワークへの届出は別の手続きです。
届出の方法
所属(契約)機関に関する届出は、主に次の方法で行うことができます。
- インターネット
- 入管窓口
- 郵送
特に便利なのが、出入国在留管理庁の電子届出システムです。インターネットを利用すれば、24時間365日届出を行うことができ、届出履歴や処理状況も確認できます。
転職の際には、退職日や新しい会社との契約日を確認し、期限を過ぎないよう早めに届出を行うことをおすすめします。
就労資格証明書とは
就労資格証明書とは、外国人が現在持っている在留資格に基づいて、どのような収入を伴う活動・報酬を受ける活動を行うことができるかを証明する文書です。
転職した外国人の場合、新しい勤務先で予定している仕事について就労資格証明書交付申請を行うことで、その仕事が現在の在留資格で行うことができる活動なのか確認することができます。
例えば、
「技術・人文知識・国際業務」でA社に勤務
↓
B社へ転職
↓
B社で予定する仕事内容について就労資格証明書を申請
という形です。
出入国在留管理庁のQ&Aでも、技術・人文知識・国際業務で転職し、在留期限がまだ残っている場合に、転職後の仕事内容が現在の在留資格で行えるか確認する方法として、就労資格証明書交付申請が案内されています。
就労資格証明書は必ず取得する必要がある?
就労資格証明書は、転職した外国人全員が必ず取得しなければならないものではありません。
これは、所属機関に関する届出との大きな違いです。
所属(契約)機関に関する届出は、対象となる外国人について法律上必要な届出ですが、就労資格証明書は希望する外国人が申請して交付を受ける制度です。
また、就労資格証明書を提出しないことだけを理由として、外国人を不利益に取り扱ってはならないことも入管法に定められています。
したがって、
転職=必ず就労資格証明書
ではありません。
ただし、転職後の仕事内容について判断が難しい場合には、取得するメリットがあります。
転職時に就労資格証明書を取得するメリット
就労資格証明書を取得する大きなメリットは、次回の在留期間更新前に、転職後の仕事内容と現在の在留資格との関係を確認できることです。
例えば、在留期限が2年後の外国人が転職した場合を考えてみます。
就労資格証明書を取得せずに新しい会社で2年間勤務し、更新時になって初めて、「この仕事内容は技術・人文知識・国際業務に該当しません」という問題が生じると、外国人本人にも会社にも大きな影響があります。
一方、転職後の早い段階で就労資格証明書を取得しておけば、現在の仕事内容についてあらかじめ確認することができます。
特に、
- 前職と仕事内容が大きく変わった
- 転職先の業種が大きく変わった
- 本人の学歴と仕事の関連性が分かりにくい
- 専門業務と現場業務が混在している
- 次回更新まで長期間ある
といった場合には、就労資格証明書を検討する価値があります。
技人国では転職後の仕事内容が重要
在留資格「技術・人文知識・国際業務」で特に重要なのは、会社名ではなく実際の仕事内容です。
例えば、外国人が前職で貿易事務を担当しており、転職後は物流会社に勤務するケースを考えてみます。
物流会社へ転職したこと自体に問題があるわけではありません。
転職先で、
- 海外取引先との折衝
- 輸出入管理
- 貿易書類の作成
- 物流企画
- 在庫管理システムの分析
などの専門的な業務を行うのであれば、技術・人文知識・国際業務に該当する可能性があります。
一方で、
- 商品の仕分け
- 梱包
- 荷物の積み下ろし
- 倉庫内でのピッキング
などを主な仕事として行う場合には、技術・人文知識・国際業務との関係で問題になる可能性があります。
重要なのは、「何の会社に転職したか」ではなく、「転職後に実際に何をするのか」です。
就労資格証明書ではどのような内容が確認される?
転職に伴って就労資格証明書を申請する場合、新しい勤務先や仕事内容について審査が行われます。
一般的には、
- 外国人本人の学歴
- 専攻内容
- これまでの職歴
- 現在の在留資格
- 転職先の会社概要
- 会社の事業内容
- 雇用契約
- 給与
- 具体的な仕事内容
- 学歴・職歴と仕事内容との関連性
などが重要になります。
出入国在留管理庁でも、転職等によって勤務先や活動内容が変わった場合には、就労資格証明書交付申請において変更後の勤務先・活動内容に関する資料を提出する取扱いとなっています。
そのため、「技人国をすでに持っている」というだけで判断されるわけではありません。転職先における仕事内容を具体的に整理することが重要です。
在留期限が近い場合は更新申請を検討
転職した場合でも、在留期限が近いのであれば、就労資格証明書ではなく在留期間更新許可申請を行う方が適切な場合があります。
出入国在留管理庁も、「技術・人文知識・国際業務」で在留期限が近く、転職する予定の場合について、転職後の活動が現在の在留資格に基づく活動と変わらないのであれば、在留期間更新許可申請を行うよう案内しています。
また、転職によって勤務先が変わった場合の就労資格証明書は、標準処理期間が1か月から3か月とされています。
そのため、「在留期限まであと2か月しかない」という場合には、就労資格証明書を先に取得してから更新するという方法が適しているとは限りません。
在留期限、転職時期、仕事内容を確認したうえで手続きを選ぶ必要があります。
仕事内容が変わる場合は在留資格変更が必要なことも
転職後に行う活動が、現在の在留資格の範囲を超える場合には、就労資格証明書ではなく在留資格変更許可申請が必要になる場合があります。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」から別の在留資格に該当する活動へ変わる場合などです。
就労資格証明書は、現在持っている在留資格で行うことができる活動を証明するための制度です。現在の在留資格では認められない活動を、新たに認めてもらうための制度ではありません。
そのため、
現在の在留資格の範囲内 → 就労資格証明書を検討
現在の在留資格とは異なる活動 → 在留資格変更許可申請を検討
という整理が重要です。
転職後に届出をしていなかった場合
転職してから時間が経った後に、「所属機関に関する届出をしていなかった」ことに気付くケースがあります。
技術・人文知識・国際業務など対象となる在留資格では、契約終了や新しい契約の締結があった日から14日以内の届出が必要です。また、在留期間更新許可を受けたとしても、転職に係る届出が当然に不要になるわけではありません。
出入国在留管理庁のQ&Aでも、転職と同時に在留期間更新許可を受けた場合であっても、転職に係る届出は必要とされています。
届出をしていないことに気付いた場合は、そのまま放置せず、速やかに対応することが重要です。
外国人を採用する会社が確認したいポイント
転職する外国人を採用する会社側も、採用前に在留資格を確認することが重要です。
特に「技術・人文知識・国際業務」の外国人を中途採用する場合は、次の点を確認します。
- 現在の在留資格
- 在留期限
- 前職の仕事内容
- 本人の最終学歴
- 大学・専門学校の専攻
- 職歴
- 自社で担当させる仕事内容
- 給与・労働条件
- 学歴・職歴と仕事内容との関連性
- 就労資格証明書を取得する必要性
「現在、技人国を持っているから採用できる」と判断するだけでは不十分です。
前の会社で認められていた仕事内容と、自社で担当させる仕事内容は別だからです。特に、転職後の仕事内容に不安がある場合は、雇用開始前後の段階で在留資格との適合性を確認することをおすすめします。
当事務所のサポート
当事務所では、外国人の転職に伴う在留資格手続きや、就労資格証明書交付申請に関するご相談に対応しております。
特に「技術・人文知識・国際業務」で転職する場合は、現在の在留資格だけではなく、外国人本人の学歴・職歴と、転職先で予定している具体的な仕事内容を確認することが重要です。
当事務所では、これらの内容を確認したうえで、就労資格証明書を取得した方がよいか、在留期間更新許可申請を行うべきか、在留資格変更許可申請が必要かを整理いたします。
例えば、次のようなご相談に対応しています。
「技人国の外国人を中途採用したい」
「転職後の仕事内容が現在の在留資格でできるか確認したい」
「就労資格証明書を取得したい」
「転職してから所属機関の届出をしていなかった」
「前職と転職後の仕事内容が大きく異なる」
「転職後、次回の在留期間更新が心配」
「外国人を採用する前に学歴と仕事内容の関連性を確認したい」
「在留期限が近いが転職する予定がある」
外国人の転職では、「届出」と「就労資格証明書」は同じ手続きではありません。
所属(契約)機関に関する届出は、勤務先との契約終了や新しい契約締結などを入管へ届け出る手続きです。
一方、就労資格証明書は、転職後の仕事が現在の在留資格で行える活動であるかを確認するために利用できる制度です。
転職後の在留資格について不安がある場合は、次回の更新時まで問題を先送りせず、早めに仕事内容を確認しておくことが重要です。
