在留資格「技術・人文知識・国際業務」などで働いている外国人が会社を退職した場合、「退職したら、すぐに日本から出国しなければならないのか」・「次の会社が決まるまで日本で転職活動をしてもよいのか」・「3か月以内に転職すれば問題ないのか」などといったご相談があります。
会社を退職したからといって、その日に在留資格が自動的になくなるわけではありません。一方で、在留カードに記載されている在留期限まで、何もしなくても必ず日本にいられるということでもありません。
「技術・人文知識・国際業務」「技能」など、就労を目的とする一定の在留資格では、その在留資格に基づく本来の活動を正当な理由なく継続して3か月以上行っていない場合、在留資格取消しの対象となる可能性があります。ただし、退職後に会社訪問を行うなど、具体的な再就職活動を継続している場合には、「正当な理由」があるとして在留資格取消しの対象とならない場合があります。
また、「技術・人文知識・国際業務」などの外国人が会社を退職した場合には、原則として退職から14日以内に「所属(契約)機関に関する届出」を行う必要があります。
本記事では、就労ビザの外国人が会社を退職した後いつまで日本に在留できるのか、3か月の考え方、転職活動中の注意点、再就職した場合に必要となる手続きについて解説します。
- 1. 会社を退職しても在留資格はすぐになくならない
- 2. 在留期限まで必ず日本にいられるわけではない
- 3. 「退職後3か月」の意味
- 4. 3か月は転職活動の猶予期間ではありません
- 5. 転職活動をしていれば「正当な理由」になることがある
- 6. 転職活動の記録を残しておく
- 7. 退職したら14日以内に入管へ届出
- 8. 14日を過ぎてしまった場合
- 9. 転職先が決まった場合も届出が必要
- 10. 同じ技人国なら在留資格変更は必要?
- 11. 転職後の仕事内容が重要
- 12. 就労資格証明書を取得する方法
- 13. 在留期限が近い場合は注意
- 14. 転職活動中にアルバイトはできる?
- 15. 会社都合で退職した場合
- 16. 外国人本人が確認しておきたいこと
- 17. 当事務所のサポート
会社を退職しても在留資格はすぐになくならない
例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」で会社に勤務している外国人が退職したとします。
会社を退職したことによって、退職日当日に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が自動的に失効するわけではありません。
例えば、
在留期限:2027年8月31日
退職日:2026年9月30日
という場合でも、2026年9月30日に在留資格そのものが当然になくなるわけではありません。
そのため、退職後に日本国内で次の就職先を探すことは可能です。ただし、就労系の在留資格は、その在留資格に該当する活動を行うことを前提として認められているものです。
会社を退職した後、長期間何もせずに日本に在留し続けてもよいという制度ではありません。
在留期限まで必ず日本にいられるわけではない
「在留カードがあと2年間有効なので、2年間は働かなくても日本にいられますか?」という質問があります。
この考え方には注意が必要です。
確かに、退職しただけで在留期間が短縮されるわけではありません。しかし、「技術・人文知識・国際業務」など入管法別表第1の在留資格については、本来の活動を継続して一定期間行っていないことが、在留資格取消しの対象となる場合があります。
したがって、
在留カードに記載された在留期限
と
退職後、本来の活動を行っていない状態
は分けて考える必要があります。
「在留期限まであと3年あるから、3年間仕事をしなくても問題ない」ということではありません。
「退職後3か月」の意味
就労ビザの外国人についてよく聞かれるのが、
「退職してから3か月以内に転職しなければならない」
という話です。
入管法上、「技術・人文知識・国際業務」「技能」「留学」などの在留資格を持つ外国人が、その在留資格に基づく本来の活動を継続して3か月以上行っていない場合には、在留資格取消しの対象となることがあります。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の外国人が会社を退職し、その後3か月以上、技人国に該当する活動を行っていない場合が考えられます。
ただし、ここで重要なのが「正当な理由」です。
本来の活動を3か月以上行っていなければ、必ず在留資格が取り消されるという制度ではありません。
3か月は転職活動の猶予期間ではありません
特に注意していただきたいポイントです。
「退職後3か月間は何をしていても日本にいられる」
という制度ではありません。
3か月という期間は、在留資格取消しに関する一つの基準です。また、入管法上は、本来の在留資格に基づく活動を行わず、正当な理由なく別の活動を行い、又は行おうとして在留している場合にも、在留資格取消しの対象となり得ます。
したがって、
退職した
↓
3か月間は自由に過ごす
↓
3か月になる直前から就職活動を始める
という考え方はおすすめできません。
日本で引き続き働く予定であれば、退職後できるだけ早く転職活動を開始することが重要です。
転職活動をしていれば「正当な理由」になることがある
会社を退職してから3か月以上経過しても、必ず在留資格が取り消されるわけではありません。
出入国在留管理庁は、「技術・人文知識・国際業務」の外国人について、会社を退職した後、再就職先を探すために会社訪問をするなど具体的な就職活動を行っていると認められる場合には、「正当な理由」があるものとして在留資格取消しの対象とならない場合があるとしています。
つまり、退職から3か月経過したかどうかだけで判断されるわけではありません。重要なのは、「日本で引き続き現在の在留資格に該当する仕事をする意思があり、そのために実際に転職活動を行っているか」という点です。ただし、「仕事を探すつもりだった」という本人の意思だけで十分とは限りません。
具体的な就職活動を行っていることが重要です。
転職活動の記録を残しておく
退職後に転職活動を行っている場合には、できるだけ記録を残しておくことをおすすめします。
例えば、
- 求人サイトへの応募履歴
- 企業への応募メール
- 履歴書・職務経歴書の送付記録
- 面接の日程連絡
- 面接を受けた記録
- ハローワークでの求職活動
- 人材紹介会社とのやり取り
- 内定通知書
- 採用選考に関するメール
などです。
これらの資料は、
「退職後も継続して具体的な再就職活動を行っていた」
ことを説明する資料になります。
特に、転職活動が3か月以上に及ぶ場合には、どのような活動を行っていたのか説明できるようにしておくとよいでしょう。
退職したら14日以内に入管へ届出
「技術・人文知識・国際業務」など一定の在留資格を持つ外国人が会社を退職した場合には、契約が終了した日から14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る必要があります。
技術・人文知識・国際業務の場合は、「所属(契約)機関に関する届出」を行います。
対象となる主な在留資格には、
- 技術・人文知識・国際業務
- 研究
- 介護
- 技能
- 特定技能
- 一定の高度専門職
- 一定の興行
などがあります。
会社を辞めただけで何も手続きをしないのではなく、まず入管への届出を忘れないことが重要です。
14日を過ぎてしまった場合
退職後、入管への届出が必要だと知らず、「退職してから数か月経ってしまった」というケースもあります。
14日を過ぎたからといって、「もう届出をしなくてよい」ということにはなりません。
出入国在留管理庁も、所属機関に関する届出をしていないことが判明した場合には、速やかに届け出るよう案内しています。また、届出を行わなかった場合や虚偽の届出をした場合については罰則が規定されており、在留関係の申請で不利益となる場合もあるとされています。
届出を忘れていたことに気付いた場合は、そのまま放置せず対応することが重要です。
転職先が決まった場合も届出が必要
転職先が決まり、新しい会社と契約を締結した場合にも、「所属(契約)機関に関する届出」が必要です。
こちらも原則として、新たな契約を締結した日から14日以内です。
例えば、
A社を9月30日退職
↓
退職について届出
↓
B社へ転職
↓
B社との新たな契約について届出
という流れになります。
退職時と転職時の両方について確認する必要があります。
同じ技人国なら在留資格変更は必要?
「技術・人文知識・国際業務」の外国人が別の会社へ転職した場合でも、新しい会社で行う仕事が引き続き「技術・人文知識・国際業務」の範囲内であれば、転職したという理由だけで在留資格変更許可申請が必要になるわけではありません。
例えば、
前職:システムエンジニア
転職後:システムエンジニア
前職:貿易業務
転職後:海外営業・貿易業務
など、引き続き同じ在留資格の範囲内の専門的業務を行う場合です。
ただし、
「現在技人国を持っている=新しい会社の仕事も当然できる」
ということではありません。
転職後の具体的な仕事内容が在留資格に該当するかを確認する必要があります。
転職後の仕事内容が重要
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、会社ではなく活動内容を基準として認められる在留資格です。
例えば、物流会社へ転職する場合でも、
- 物流企画
- 輸出入管理
- 海外取引
- データ分析
- システム管理
などの専門業務を担当するのであれば、技人国に該当する可能性があります。
一方、
- 商品の仕分け
- 梱包
- ピッキング
- 荷物の積み下ろし
などを主な業務として行う場合には、技術・人文知識・国際業務との関係で問題となる可能性があります。
そのため、転職先を探す際は、
- 給与
- 勤務地
- 勤務時間
だけでなく、
「自分の在留資格で、その仕事内容を行うことができるか」
を確認することが重要です。
就労資格証明書を取得する方法
転職後の仕事内容が現在の在留資格で行えるか不安な場合には、就労資格証明書交付申請を検討する方法があります。
就労資格証明書は、現在持っている在留資格に基づいて、どのような就労活動を行うことができるのかを証明するための制度です。
特に、
- 前職と転職後の業種が大きく異なる
- 仕事内容が大きく変わる
- 本人の専攻と仕事内容との関連性が分かりにくい
- 次の在留期間更新まで長期間ある
といった場合には、取得を検討するメリットがあります。
転職後の仕事について事前に確認しておくことで、次回の在留期間更新時になって初めて仕事内容の問題が判明するリスクを減らすことができます。
在留期限が近い場合は注意
転職活動を行っている間に、現在の在留期限が近づいてくることがあります。
例えば、
退職時点では在留期間が6か月残っていた
↓
転職活動が長期化
↓
在留期限まであと1か月になった
というケースです。
転職活動をしているからといって、現在の在留期間が自動的に延長されるわけではありません。
在留期間が満了する前に、本人の状況に応じた在留手続きを検討する必要があります。
転職先が決まっていれば、新しい勤務先の資料を使用して在留期間更新許可申請を行うことが考えられます。一方、在留期限が迫っているにもかかわらず転職先が決まっていない場合は、今後の在留資格について早めに確認する必要があります。
「まだ転職活動中だから大丈夫」と考えて、在留期限そのものを過ぎないよう注意してください。
転職活動中にアルバイトはできる?
会社を退職すると、次の勤務先が決まるまで収入がなくなるため、「転職活動をしながらアルバイトをしたい」と考える方もいます。しかし、現在持っている在留資格で認められていない仕事を、自由に行うことはできません。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」の外国人が、
- コンビニ
- 飲食店のホール
- 倉庫内作業
- 商品の仕分け
などの仕事を、生活費を得るために自由に始めることはできません。
現在の在留資格に該当しない報酬を受ける活動を行う場合には、資格外活動許可との関係を確認する必要があります。
「会社を辞めて無職になったので、どんなアルバイトでもできる」
ということではありません。
収入面でアルバイトが必要な場合は、働き始める前に在留資格上可能なのかを確認してください。
会社都合で退職した場合
会社の倒産や事業縮小など、外国人本人の責任ではない事情によって仕事を失う場合もあります。
出入国在留管理庁では、雇用先の倒産・事業縮小による解雇など、やむを得ない事情によって就労継続が困難になった外国人について、一定の場合に「特定活動(就労継続支援)」の対象となる制度を設けています。
例えば、やむを得ない事情で活動継続が困難となり、3か月を経過しても新しい雇用先が確保されていない場合などが対象として示されています。ただし、単に自己都合で退職したすべての外国人が対象となる制度ではありません。
退職理由、現在の在留資格、転職活動の状況などによって取扱いが異なります。会社都合による退職で再就職が長期化している場合は、早めに現在の在留資格について確認することをおすすめします。
外国人本人が確認しておきたいこと
就労ビザで働いている外国人が退職した場合は、次の事項を確認しておくことが重要です。
- 退職日はいつか
- 入管への届出を行ったか
- 現在の在留資格は何か
- 在留期限はいつか
- 転職活動を開始しているか
- 応募や面接の記録を残しているか
- 新しい会社の仕事内容が現在の在留資格に該当するか
- 新しい会社との契約後に入管へ届出を行ったか
- 就労資格証明書を取得した方がよいか
- 在留期限までに次の勤務先が決まりそうか
特に重要なのは、
「3か月」という数字だけで判断しないこと
です。
積極的に転職活動を行っている場合と、何もせず長期間在留している場合では、状況が異なります。また、3か月以内であっても、本来の在留資格に基づく活動を行わず、正当な理由なく別の活動を行おうとしている場合には、在留資格取消しとの関係で問題となる可能性があります。
当事務所のサポート
当事務所では、在留資格「技術・人文知識・国際業務」などで勤務している外国人の退職・転職に伴う在留資格についてご相談に対応しております。
会社を退職した場合、在留資格がその日に自動的になくなるわけではありません。
一方で、
「退職後3か月までは何もしなくても大丈夫」
という制度でもありません。
退職後も日本で働くことを希望する場合には、14日以内の所属機関に関する届出を行い、できるだけ早く具体的な転職活動を開始することが重要です。
また、新しい勤務先が決まった場合には、その会社で行う仕事が現在の在留資格で認められるかを確認する必要があります。
例えば、次のようなご相談に対応しています。
「技人国で働いていた会社を退職した」
「退職してから3か月以上経過している」
「転職活動中だが在留資格が心配」
「退職後の所属機関に関する届出をしていなかった」
「転職先が決まったので必要な手続きを確認したい」
「新しい会社の仕事内容が技人国に該当するか確認したい」
「就労資格証明書を取得したい」
「在留期限が近いが、まだ転職先が決まっていない」
「会社都合で退職し、再就職先を探している」
退職後の在留資格では、退職日、在留期限、転職活動の状況、新しい仕事内容をそれぞれ確認することが重要です。
会社を退職した後の在留資格や転職に伴う手続きについて不安がある場合は、在留期限が迫る前にご相談ください。
