在留資格「家族滞在」で日本に在留している外国人の方が、日本企業への就職をきっかけに、在留資格「技術・人文知識・国際業務」へ変更するケースがあります。
「家族滞在」は、一定の在留資格で日本に在留する外国人の扶養を受ける配偶者や子が、日本で日常的な活動を行うための在留資格です。原則として就労を目的とした在留資格ではありません。
資格外活動許可を取得していれば、一般的には週28時間以内のアルバイトをすることができますが、日本企業に就職して「技術・人文知識・国際業務」に該当する仕事を本格的に行う場合には、在留資格変更許可申請を行う必要があります。ただし、会社から内定をもらっただけで「技術・人文知識・国際業務」へ変更できるわけではありません。
本人の学歴や職歴、学校で学んだ内容、就職後の仕事内容、給与、勤務先企業の状況などを確認し、「技術・人文知識・国際業務」の要件を満たしているかを審査されます。
本記事では、家族滞在から技術・人文知識・国際業務へ変更するための要件、就職先や仕事内容の確認、申請時の注意点について解説します。
- 1. 家族滞在から技人国へ変更できる?
- 2. 家族滞在のままフルタイムで働くことはできない
- 3. 技術・人文知識・国際業務とは
- 4. まず仕事内容が技人国に該当するか確認
- 5. 大学卒業者の場合
- 6. 専門学校卒業者の場合
- 7. 学歴の要件を満たさない場合
- 8. 国際業務の場合は3年以上の実務経験が必要なことも
- 9. 給与にも要件があります
- 10. 日本語能力は必ずN2が必要?
- 11. 内定後いつ変更申請をする?
- 12. 許可される前に働き始めてもよい?
- 13. 資格外活動許可がある場合の注意点
- 14. 家族滞在から変更する際の主な必要書類
- 15. 申請で確認される会社側の内容
- 16. これまでの在留状況も重要
- 17. 配偶者の在留資格に左右されなくなる
- 18. 当事務所のサポート
家族滞在から技人国へ変更できる?
在留資格「家族滞在」で日本に在留している方でも、「技術・人文知識・国際業務」の要件を満たしていれば、在留資格変更許可申請を行うことができます。
例えば、次のようなケースがあります。
- 海外の大学を卒業して日本で配偶者と生活している方が、日本企業へ就職する
- 家族滞在で日本に在留している子が大学を卒業し、日本企業へ就職する
- 海外での職務経験を持つ配偶者が、日本企業から採用される
- 家族滞在中に資格外活動で勤務していた会社から正社員として採用される
重要なのは、「家族滞在であること」ではありません。
本人自身が技術・人文知識・国際業務の要件を満たしているかが審査されます。
家族滞在から技術・人文知識・国際業務への変更も、他の在留資格から変更する場合と同様に、本人の学歴・職歴と仕事内容との関係などが確認されます。
家族滞在のままフルタイムで働くことはできない
「家族滞在」は、就労そのものを目的とした在留資格ではありません。
資格外活動許可を取得している場合には、一般的に1週間について28時間以内の範囲でアルバイトなどをすることができます。
例えば、
「現在、家族滞在で週20時間アルバイトをしているが、会社から正社員にならないかと言われた」というケースがあります。
この場合、資格外活動許可があるからといって、そのまま週40時間勤務の正社員として働けるわけではありません。
正社員として担当する仕事が「技術・人文知識・国際業務」に該当するのであれば、家族滞在から技術・人文知識・国際業務への在留資格変更を検討する必要があります。
技術・人文知識・国際業務とは
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、日本の会社等との契約に基づいて、専門的な技術・知識や外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする仕事に従事するための在留資格です。
代表的な仕事としては、次のようなものがあります。
- システムエンジニア
- プログラマー
- 機械設計
- 電気・電子関係の技術者
- 経理
- 人事
- 貿易業務
- マーケティング
- 海外営業
- 通訳・翻訳
- デザイン
- 商品開発
などです。
一方、職種名だけで判断することはできません。
例えば「営業職」と記載されていても、実際には商品の梱包や倉庫作業が中心であれば、技術・人文知識・国際業務として認められない可能性があります。
まず仕事内容が技人国に該当するか確認
家族滞在から技術・人文知識・国際業務へ変更する場合、最初に確認したいのが就職後の具体的な仕事内容です。
技術・人文知識・国際業務では、単に会社に雇用されているだけでは足りません。専門的な技術又は知識を必要とする仕事であることが必要です。
例えば、
- 海外営業
- 貿易事務
- 外国人顧客対応
- マーケティング
- システム開発
- 設計
- 経理・財務
- 通訳・翻訳
などであれば、技術・人文知識・国際業務に該当する可能性があります。
一方、
- 商品の仕分け
- 梱包
- 清掃
- 飲食店での配膳のみ
- 工場ライン作業
- 倉庫でのピッキング
- 建設現場での作業
などを主な仕事とする場合には、技術・人文知識・国際業務として認められない可能性があります。
重要なのは、会社の業種ではなく、外国人本人が実際に担当する仕事です。
大学卒業者の場合
技術・人文知識・国際業務のうち、「技術」又は「人文知識」に該当する仕事を行う場合、代表的な要件の一つが大学等の卒業です。
原則として、予定している仕事に必要となる技術・知識に関連する科目を専攻して大学を卒業していることなどが求められます。
例えば、
大学で経済学を専攻
↓
日本企業で経理・財務やマーケティング業務
大学で情報工学を専攻
↓
システムエンジニア
大学で国際関係を専攻
↓
海外営業・貿易業務
などです。
ただし、大学卒業者については、専門学校卒業者と比較すると、専攻科目と予定する仕事内容との関連性は比較的緩やかに判断されます。
そのため、大学名や学部名だけではなく、成績証明書などから実際にどのような科目を履修したのかを確認することが重要です。
専門学校卒業者の場合
日本の専門学校を卒業している場合にも、技術・人文知識・国際業務へ変更できる可能性があります。ただし、原則として、専門士又は高度専門士の称号を取得していることに加えて、専門学校で学んだ内容と就職後の仕事内容との関連性が重要になります。
例えば、
IT系専門学校
↓
プログラマー・システムエンジニア
ホテル・観光系専門学校
↓
ホテルの企画・外国人対応等
会計系専門学校
↓
経理業務
などが考えられます。
専門学校卒業者の場合は、卒業証明書だけでなく、成績証明書、履修科目、専門士の証明などを確認しながら、予定する仕事内容との関連性を整理します。
学歴の要件を満たさない場合
大学や専門学校を卒業していない場合でも、一定の実務経験によって「技術・人文知識・国際業務」の要件を満たすことがあります。
技術又は人文知識に該当する業務の場合、原則として、関連する業務について10年以上の実務経験が必要です。
この10年間には、大学、高校、専門学校などで関連する科目を専攻した期間を含めることができます。
例えば、海外で長期間、
- ITエンジニア
- 経理担当者
- 設計技術者
- 貿易実務担当者
などとして勤務していた方であれば、職歴によって要件を満たす可能性があります。ただし、その場合には、以前勤務していた会社の在職証明書など、実際の職務内容と勤務期間を証明できる資料が重要になります。
国際業務の場合は3年以上の実務経験が必要なことも
翻訳、通訳、語学の指導、海外取引業務など、「外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務」に該当する場合は、原則として関連する業務について3年以上の実務経験が必要です。
ただし、大学を卒業した方が翻訳、通訳又は語学の指導に従事する場合には、この3年間の実務経験は求められません。
そのため、「外国語が話せるから通訳として技人国に変更できる」とは限りません。
本人の学歴や職歴、予定する業務内容を確認する必要があります。
給与にも要件があります
技術・人文知識・国際業務では、外国人だからという理由で給与を低く設定することはできません。
申請人が受ける報酬は、同じ仕事を行う日本人が受ける報酬と同等額以上である必要があります。
例えば、
「外国人なので日本人社員より安い給与にする」という雇用条件では問題になる可能性があります。
給与額は単に月額だけを見るのではなく、会社内で同種の業務を行っている日本人社員の給与体系や、職務内容、経験なども踏まえて確認します。
日本語能力は必ずN2が必要?
「家族滞在から技人国へ変更するには、日本語能力試験N2が必要ですか?」
というご質問もあります。
技術・人文知識・国際業務のすべての仕事について、N2が一律に必要なわけではありません。
システムエンジニアや設計など、主として言語能力を使った対人業務ではない場合には、今回の制度上、当然にN2が必須となるわけではありません。
一方、2026年4月15日以降、翻訳・通訳や接客など、言語能力を主として使用する対人業務については、業務で使用する言語についてCEFR・B2相当の能力が重要になっています。日本語の場合、JLPT・N2以上などがB2相当を確認する代表的な方法です。
したがって、日本語能力についても、外国人本人が担当する仕事内容に応じて確認する必要があります。
内定後いつ変更申請をする?
家族滞在から技術・人文知識・国際業務へ変更する場合は、会社から内定を受け、雇用契約や仕事内容など申請に必要な内容が確定した段階で準備を進めます。在留資格変更許可申請は、現在持っている在留資格とは異なる活動を行おうとする場合の手続きです。
出入国在留管理庁では、変更の事由が生じた場合には速やかに申請するよう案内しています。
特に、「来月から正社員として働いてほしい」という場合には、入社予定日から逆算して準備することが重要です。審査には一定の期間が必要になるため、雇用開始直前になってから申請すると、予定していた入社日に就労を開始できない可能性があります。
許可される前に働き始めてもよい?
ここは特に注意が必要です。
在留資格変更許可申請を提出しただけでは、技術・人文知識・国際業務として働くことはできません。
申請中も、現在の在留資格は「家族滞在」です。
したがって、変更許可を受ける前に、技術・人文知識・国際業務を前提としたフルタイム勤務を開始することはできません。会社側も、「変更申請を出したので、今日から正社員として勤務してください」としないよう注意が必要です。
原則として、技術・人文知識・国際業務への変更許可を受けてから、その在留資格に基づく就労を開始することになります。
資格外活動許可がある場合の注意点
家族滞在の方がすでに資格外活動許可を取得し、内定先でアルバイトをしているケースもあります。
例えば、
家族滞在+資格外活動許可
↓
週20時間で勤務
↓
会社から正社員として採用
↓
技術・人文知識・国際業務へ変更申請
というケースです。
この場合、変更許可が出るまでの間、現在の資格外活動許可の範囲内でアルバイトを継続できることはあります。ただし、包括的な資格外活動許可であれば、原則として週28時間以内という制限があります。変更申請中だからといって、週40時間勤務に切り替えることはできません。
家族滞在から変更する際の主な必要書類
技術・人文知識・国際業務への在留資格変更許可申請では、勤務先のカテゴリーや本人の経歴などによって必要書類が異なります。
主な資料としては、次のようなものがあります。
- 在留資格変更許可申請書
- 写真
- パスポート
- 在留カード
- 雇用契約書又は労働条件通知書
- 職務内容や地位、契約期間、報酬額が分かる資料
- 大学・専門学校等の卒業証明書
- 成績証明書
- 専門士・高度専門士の証明
- 職歴によって申請する場合の在職証明書
- 勤務先企業のカテゴリーを証明する資料
- 会社概要や事業内容に関する資料
- 決算書類等
2026年3月9日から、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格変更許可申請について新しい提出書類一覧が運用されています。勤務先のカテゴリーによって提出する会社関係資料が異なります。
実際の申請では、本人の学歴・職歴や会社の状況に応じて追加資料を準備することがあります。
申請で確認される会社側の内容
家族滞在から技術・人文知識・国際業務へ変更する場合、外国人本人だけでなく、採用する会社についても確認されます。
例えば、
- 会社が実際に事業を行っているか
- どのような事業を行っているか
- 外国人を採用する必要性があるか
- 外国人に担当させる仕事が実際に存在するか
- 雇用契約の内容が適切か
- 給与が適切か
- 継続的に雇用できる会社であるか
などです。
特に、設立直後の会社や新規事業で外国人を採用する場合には、事業計画や外国人に担当させる具体的な仕事について、より丁寧な説明が必要になることがあります。
これまでの在留状況も重要
技術・人文知識・国際業務への変更では、学歴や仕事内容だけではなく、これまで日本で適切に在留していたかも重要です。
例えば、
- 資格外活動許可を受けずに働いていた
- 週28時間を恒常的に超えて働いていた
- 必要な届出を行っていなかった
- 在留資格に沿わない活動をしていた
などの事情がある場合、変更申請で消極的な要素として判断される可能性があります。
出入国在留管理庁でも、技術・人文知識・国際業務への変更審査では、資格外活動許可の条件違反や入管法上の届出義務の履行状況などが考慮されることを示しています。
そのため、申請前には、現在までの資格外活動状況も確認しておくことが重要です。
配偶者の在留資格に左右されなくなる
家族滞在は、一定の在留資格を持つ外国人の扶養を受ける配偶者又は子として認められる在留資格です。
一方、技術・人文知識・国際業務へ変更すると、本人自身の就労活動を根拠として日本に在留することになります。
例えば、夫が技術・人文知識・国際業務、妻が家族滞在で在留していた場合、
夫:技術・人文知識・国際業務
妻:家族滞在
から、
夫:技術・人文知識・国際業務
妻:技術・人文知識・国際業務
という形になることもあります。
この場合、妻は夫の扶養を受けることを在留資格の基礎とするのではなく、自分自身の雇用契約や仕事内容、学歴・職歴を基礎として在留することになります。
将来的な転職や在留期間更新についても、本人自身の就労状況を基準として手続きを行います。
当事務所のサポート
当事務所では、「家族滞在」から「技術・人文知識・国際業務」への在留資格変更許可申請に対応しております。
家族滞在から就労資格へ変更する場合は、単に就職先が決まっているだけではなく、本人の学歴・職歴、学校での専攻内容、就職後の仕事内容、給与、勤務先企業の状況などを確認する必要があります。
例えば、次のようなご相談に対応しています。
「家族滞在で日本にいる妻が正社員として就職することになった」
「家族滞在の子が大学を卒業して日本企業へ就職する」
「海外の大学を卒業しているが、技人国へ変更できるか確認したい」
「専門学校の専攻と仕事内容が合っているか確認したい」
「現在アルバイトしている会社から正社員として採用したいと言われた」
「N2を持っていないが技人国へ変更できるか確認したい」
「資格外活動で働いていた時間が変更申請に影響しないか心配」
「外国人を家族滞在から技人国に変更して採用したい」
特に注意したいのは、採用が決まったことと、在留資格変更が許可されることは別であるという点です。
外国人本人の学歴や職歴と、会社で予定している仕事内容が「技術・人文知識・国際業務」の基準を満たしているかを採用段階で確認しておくことが重要です。
また、変更許可が出る前にフルタイム勤務を開始すると、現在の「家族滞在」の在留資格や資格外活動許可との関係で問題になる可能性があります。
家族滞在の外国人を正社員として採用する場合や、家族滞在から就労資格への変更をご検討されている方は、雇用開始前に在留資格について確認することをおすすめします。
