社会貢献などを目的とした組織を作りたいとお考えの方は、NPO法人の設立について検討されているかもしれませんね。しかし、いざNPO法人を立ち上げようとしたときに、株式会社や一般社団法人との違い、設立のメリット・デメリットなどの疑問を持つ方が多いです。本記事では、そのような疑問点を解消し、円滑に手続きを進めるためのポイントを解説します。
- 1. NPO法人とは
- 1.1. NPO法人の特徴
- 1.2. NPO法人は利益の分配が禁止されている
- 1.3. NPO法人は利益を得ること自体はOK
- 2. NPO法人設立のメリット・デメリット
- 2.1. NPO法人設立のメリット
- 2.1.1. 社会的信用を得やすい
- 2.1.2. 団体名で契約や登記ができる
- 2.1.3. 補助金や助成金制度が充実
- 2.1.4. 税金面でも有利
- 2.2. NPO法人設立のデメリット
- 2.2.1. NPO法人設立に時間がかかる
- 2.2.2. 活動内容に制限がある
- 2.2.3. 事業内容の変更などが簡単にできない
- 2.2.4. 納税義務や会計書類の作成が複雑になる
- 3. NPO法人設立の手続きと流れ
- 3.1. 設立発起人会の開催
- 3.2. 設立総会の開催
- 3.3. 設立認証申請書類の作成・提出
- 3.4. 縦覧・審査
- 3.5. 認証・不認証の決定
- 3.6. 設立登記の申請
- 3.7. 設立登記完了の届出
- 4. NPO法人設立は専門家へ
NPO法人とは
NPO(非営利組織)とは、様々な社会貢献活動を行い、団体の構成員に利益を分配することを目的としない組織のことを指します。法人格を持たずに活動することも可能ですが、任意団体の場合、団体名では契約や登記ができないなど、組織の運営上、不便な点もあります。このような不便さを解決するために、NPO法人(特定非営利活動法人)設立の制度が設けられています。
NPO法人の特徴
法人を立ち上げる際、NPO法人・株式会社・一般社団法人のどれにするか悩まれる方がいらっしゃいます。ここではNPO法人の特徴について解説します。
NPO法人は利益の分配が禁止されている
NPO法人と株式会社の大きな違いは、「営利性があるかどうか」です。株式会社などの営利法人では、構成員への利益の分配が可能ですが、NPO法人は非営利法人なので、構成員に利益を分配することはできません。
NPO法人は利益を得ること自体はOK
誤解を受けやすいところとして、NPO法人は非営利法人ではありますが、利益を得ること自体は認められています。あくまでも、利益の分配が禁止されているのであり、収益を得てそれを活動資金に充てることについては、何ら問題はありません。
NPO法人設立のメリット・デメリット
NPO法人の設立にはいくつかメリットやデメリットがありますので、NPO法人設立の際は事前に確認しましょう。
NPO法人設立のメリット
- 社会的信用を得やすい
- 団体名で契約や登記ができる
- 補助金や助成金制度が充実
- 税金面でも有利
社会的信用を得やすい
NPO法人には、都道府県への決算書類等の提出が義務付けられています。団体の財務状況や経営状況が第三者にも公開されることとなるので、対外的な信用力を高めることができます。
団体名で契約や登記ができる
NPO法人ではなく任意団体の場合、契約や登記に関しては、代表者の個人名で行うこととされていますが、NPO法人となることで、団体名での契約や登記が可能です。これによって、団体と個人の資産を明確に区別することができ、団体運営の透明性が確保されます。
補助金や助成金制度が充実
行政からの公益事業の受託事業や補助金を受けるには、法人であることが条件になっていることが多々ありますので、NPO法人となることで受けられる補助金等の幅が広がります。
税金面でも有利
NPO法人の場合、収益事業に該当しない非営利活動の収入は、課税対象となりません。その一方で、任意団体の場合はすべての収入が課税対象となってきますので、税金面でも法人格を持つことにはメリットがあります。
NPO法人設立のデメリット
- NPO法人設立に時間がかかる
- 活動内容に制限がある
- 事業内容の変更などが簡単にできない
- 納税義務や会計書類の作成が複雑になる
NPO法人設立に時間がかかる
NPO法人の設立には、最低でも10名の設立時社員が必要です。株式会社や一般社団法人の設立と比較すると、NPO法人の設立は、設立時社員を集めることに時間がかかると言えます。また法人設立手続きにかかる期間としても、3~4か月の時間を要します。
活動内容に制限がある
NPO法人の活動分野は、特定の20分野に制限されています。例えば後から事業内容を追加したいと思ったときに、追加する事業内容が法定の分野に該当しない場合は、その事業をNPO法人では実施できないことになります。つまり、組織形態をNPO法人にするかどうかは、将来の事業展開も見据えた上で検討していく必要があります。
事業内容の変更などが簡単にできない
NPO法人が、設立後に事業内容を変更しようとする場合、定款の変更が必要となります。定款変更を行うには、社員総会の決議を経なければなりません。また、変更後の定款について所轄庁から認証を受ける必要もあります。
納税義務や会計書類の作成が複雑になる
NPO法人は法人格を所有することとなるため、法人税が課されます。法人税法上の収益事業を行っている場合は、収益に対して納税の義務が生じます。収益の有無に関わらず、すべての法人に法人住民税がかかります。ただし、収益事業を行っていない場合等、減免の手続きにより免除されることがあります。またNPO法人の経理は、NPO法人会計基準に従って行われることはもちろんですが、それに加えて、事業報告書や活動計算書などを事務所に備え付けること、それらの資料を所轄庁へ提出などが必要になります。
NPO法人設立の手続きと流れ
NPO法人の設立には、3~4か月の時間を要します。全体像を把握しておくことで、事前に必要な書類を準備できるなど、スムーズに手続きを進めていくことができるでしょう。以下では、どの時期に何をしなければいけないかを簡単にご説明いたします。
- 設立発起人会の開催
- 設立総会の開催
- 設立認証申請書類の作成・提出
- 縦覧・審査
- 認証・不認証の決定
- 設立登記の申請
- 設立登記完了の届出
設立発起人会の開催
まずは設立者(発起人)が集まり、設立発起人会を開催します。この会で設立の趣旨、目的、役員の決定、事業計画、収支計画などについて話し合いを行い、これらの事項が決定したら、定款の原案を作成します。
設立総会の開催
設立時社員を10名以上決定の上、設立総会を開催し、定款等についての決議を行います。
設立認証申請書類の作成・提出
法人設立認証申請に必要な、役員の就任承諾書及び誓約書などの書類を作成し、所轄庁に提出いたします。
縦覧・審査
申請が受理されると、一般に広く情報公開するという目的から、所轄庁において申請書類の縦覧が行われます。その後、申請内容が認証に必要な要件に合致しているかどうかなどが審査されます。
認証・不認証の決定
審査の結果、認証となった場合は、「認証書」が発行されます。仮に不認証となった場合は、その理由を付した書面が通知されますが、不認証の場合でも修正して再度申請することはできます。
設立登記の申請
主たる事務所の所在地を管轄する法務局に、設立登記の申請を行います。設立登記の申請をしてはじめて、NPO法人が成立したとみなされます。設立登記申請日が、NPO法人の設立日ということになります。設立登記の申請は、認証書が到達してから2週間以内に行う必要があります。
設立登記完了の届出
登記完了後は、速やかに設立登記完了届出書・登記事項証明書・設立当初の財産目録を所轄庁に提出します。ここまで完了すれば、晴れてNPO法人としての活動をスタートさせることができます。
NPO法人設立は専門家へ
今回はNPO法人設立について解説をいたしましたが、設立をすることによるメリット、デメリットについては、十分に比較検討する必要があります。またNPO法人設立後に許認可手続きが必要な障害福祉事業を検討中の場合、NPO法人設立時から専門家に相談した方が許認可手続きを見越したアドバイスをしていただけます。
弊社はNPO法人の設立~運営までサポートしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
この記事の監修者 特定行政書士 宗方 健宏 行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。障害福祉事業所と医療法人は、設立~運営までサポートしております。障害福祉事業所は、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。 |