外国籍の従業員が結婚する場合、企業としては在留資格(ビザ)の変更やさまざまな手続きやサポート業務が発生します。その中でも特に注意が必要なのが、そのままの在留資格で勤務を続けるか、あるいは新たな在留資格に変更するかになるでしょう。

基本的には、日本人従業員が結婚した場合と似通った注意点になりますが、外国人特有の注意点もありますのでしっかりと把握しておきましょう。

本記事では、外国人従業員が結婚した場合の注意点について詳しく解説します。在留資格に関する事柄や、会社としての注意点や手続きについて解説します。

外国人従業員が結婚した場合の在留資格

結婚後の在留資格の変更に関しては、個々の状況によって異なるため、具体的なケースごとに適切な手続きを行う必要があります。ただし、必ずしも変更する必要はありませんので、ケースバイケースで対応しましょう。

1)在留資格の変更は必須ではありません

外国人が結婚した場合、在留資格を変更する必要があるのか疑問に思う方は多いのではないでしょうか。しかし、在留資格の変更は必ずしも必須ではなく、具体的なケースによって異なります。

外国人従業員が日本人と結婚する場合には、「日本人の配偶者等」へ変更することが可能ですが、必ず変更しなければならないわけではありません。外国人同士で結婚する場合にも同様です。

現在の在留資格のままでいるか変更するかは、それぞれのメリット・デメリットや、外国人従業員の今後のライフプランをもとに判断しましょう。

2)在留資格の変更が必要なケース

一方で、在留資格の変更が必要な場合として、退職して会社員を辞める場合などがあります。退職すると在留期間が残っていても、現在の就労ビザのまま滞在することはできません。そのため、配偶者の国籍や在留資格に合わせて速やかに在留資格の変更をする必要があります。

外国籍の従業員が結婚によって在留資格の変更が必要な場合、基本的には本人が手続きを行います。そのため、会社としては「在職証明書」や収入に関する資料を、本人に提供するなどのサポートが必要になります。まずは結婚する外国籍の従業員の今後の生活についてヒアリングし、在留資格の変更が必要かどうかを確認しましょう。

在留資格の変更には、所定の手続きが必要となり、変更申請書や必要な書類を提出することで、在留資格の変更を申請できます。手続きには時間がかかる場合もあるため、早めに手続きを進めるようにしましょう。

外国人従業員が結婚した場合の会社としての注意点

外国人従業員が結婚するケースでは、会社としての対応が必要なことが多々発生します。下記の注意点を踏まえ、円滑な手続きと従業員のサポートを行うことで、従業員の満足度がアップし、生産性の向上につなげることができるでしょう。

1)在留資格の確認

外国人従業員が結婚した場合、前述のように在留資格(ビザ)の変更が必要な場合があります。まずは、従業員の在留資格を確認し、必要な手続きを進めることが重要です。変更手続きが必要な場合には、会社としてのサポートが必要になります。また、適正に変更手続きが行われていない場合には、ペナルティを受けることもありますので、会社としてもしっかりと確認するようにしましょう

2)家族滞在ビザの申請

外国人従業員の配偶者となる方を海外から呼び寄せる場合には、家族滞在ビザの手続きが必要です。家族滞在ビザは色々と条件や制約がありますので、会社側で手続きのサポートや必要書類の提出支援を行い、円滑な手続きを進めることが望ましいでしょう。

3)労働条件の変更

外国人従業員が結婚した場合、労働条件に変更が生じる可能性があります。例えば、配偶者の勤務先の関係で、従業員の勤務地や勤務時間が変更される場合もあります。会社と従業員との間で円満な調整を行い、労働条件の変更に対応することも念頭に置いておきましょう。

外国人従業員の結婚に関する手続きは就業規則通りに

外国人従業員の結婚に関する手続きは、企業の就業規則等に基づいてしっかりと行いましょう。福利厚生や長期休暇の申請、配偶者の扶養対応など、結婚後の生活に関わる重要な事項ですので、就業規則等をしっかりと確認し、手続きを適切に行う必要があります。

外国人従業員への対応は、法令等を遵守して行うことが重要ですので、関連する法律や就業規則・各種規程を再度確認して、適切に手続きしましょう。外国人だからといって、日本人従業員と異なる対応をすると、大きなトラブルにつながることがありますので、十分にご注意ください。

1)福利厚生

外国人従業員が結婚した場合、福利厚生に関する手続きは就業規則等に基づいて行いましょう。福利厚生とは、労働者に対して提供される社会保険や年金、休暇制度などの福利措置のことです。結婚後の配偶者に対する福利厚生の適用については、就業規則等に明記されている場合があります。例えば、健康保険や厚生年金などの加入手続きや手当の支給などが該当します。

2)長期休暇の申し入れ

結婚後、外国人従業員が長期休暇を取得する場合、就業規則等に基づき申請手続きを行いましょう。結婚後の新婚旅行や家族との時間を過ごすために必要な場合があります。ただし、長期休暇の取得には事前の申請が必要であり、就業規則に定められた手続きを遵守する必要があります。

3)配偶者の扶養対応

外国人従業員が結婚した場合、配偶者の扶養に関する対応も就業規則に基づいて行いましょう。扶養とは、経済的に家族を支えることを指し、配偶者を扶養家族として認めることで、給与や手当などの支給額や社会保険の適用範囲が変わる場合があります。ただし、配偶者を扶養に入れるかどうかは、企業の就業規則や労働契約、関連法令によって異なる場合がありますので、個別に確認する必要があります。

外国人従業員や配偶者の年収や、130万円の壁問題などの制度ルールによって、ケースバイケースで対応が異なります。関連する法律や制度、就業規則や各種規程に基づいて、適切な対応をするように心がけましょう。

外国人従業員の結婚後の名前について

外国人の結婚後の名字は、ケースバイケースで対応が変わります。結婚後に名字が変更されない場合もありますし、外国人配偶者の名字に変更するための届出を行う場合もあり、母国の法律などによって名字が変更されることもあります。

日本人と結婚した場合は、戸籍を1つにすることで名字が変更されますが、外国籍の場合は戸籍に入ることがないため、名字は変更されません。

また、結婚を機に通称名を使用する方もいらっしゃいます。さらに、結婚後6ヵ月以内に「外国人配偶者の氏への氏変更届」を提出することで、日本人は外国人配偶者の名字を使用でき、この場合には戸籍の名字が変わります。

外国人同士の結婚の場合、名字の変更は国籍や母国のルールによって異なりますので、確認が必要です。状況によっては、手続きが必要な場合もありますので注意が必要です。

名前や名字が変わる場合には、各種保険や在留資格などの変更手続きが必要になりますので、会社としてもしっかりと確認しておきましょう。

参考:法務省「国際結婚、海外での出生等に関する戸籍Q&A」

この記事の監修者 
特定行政書士 宗方 健宏

行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。医療法人設立は、日々の診療で多忙な医師に変わり、設立から運営までサポートしております。障害福祉事業所の立ち上げ・運営コンサルティングは、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。