地方厚生局からクリニックに個別指導の実施通知が届いた際、どのように対応すれば良いか…どうすれば良いか…誰に相談すれば良いかなど不安が生じます。本記事では、医療機関における個別指導の必要性や監査との違い、個別指導が入ったときの注意点、個別指導の対象となりえる請求内容、取り消し処分にならないための対応について解説します。

厚生局が行う個別指導とは

医療機関の個別指導とは、厚生局が医療機関や保険医に対して診療費の請求を適切におこなうよう指導するものです。医療機関は法律により、指導を受ける義務があります。

医療機関は開設するにあたり、医療法や健康保険法等に則る必要があります。保険医として指定されるにも、国家試験合格後に保険医の申請をおこなわなければいけません。

どちらも指定を受けるには保険診療に対して理解していることが前提となるため、個別指導ではすべての医療機関や保険医が対象となっています。

医療機関への個別指導の種類

厚生省が行う個別指導には複数の種類があるため、どのような内容があるか理解しておきましょう。ここでは、医療機関への個別指導の種類を2つ解説します。

  • 新規指定医療機関が対象の個別指導
  • 既指定医療機関が対象の個別指導

新規指定医療機関が対象

新規指定医療機関が対象の個別指導は、新たに保険医療機関の指定を受けた医療機関を対象に、指定を受けた半年から1年以内に個別の面談形式で実施されます。保険診療を始めて間もない医療機関が、保険診療を理解して請求をおこなっているか確認のため実施しています。

個別指導時は約10名のカルテを指定され、内容に誤りがないかを確認されます。内容によっては自主変換を求められ、個別指導や監査につながる可能性もあるのです。

既指定医療機関が対象

既指定医療機関が対象の個別指導では、新規指定医療機関とは異なり集団で指導がおこなわれています。患者や保険者からの情報や、前回「再指導」とされた医療機関が対象です。

個別指導と監査の違い

医療機関への個別指導は保険診療をおこなうにあたり必要な診療報酬請求知識を周知徹底し教育するのが目的です。一方監査は、保険診療の内容や請求に対して不正や不当がある場合の改善を目的としています。

また、個別指導によって監査につながる場合もあり、監査の結果次第では医療機関に処分が下されるのです。最悪の場合は、「指定医療機関」や「保険医」が取り消し処分になる可能性もあります。

医療機関への個別指導の結果、取り消し処分になった場合

厚生局がおこなう個別指導・監査の結果で取り消し処分を受けた場合医療機関や保険医は、原則5年間は再指定や再登録がおこなえなくなります。さらに、5年間分の診療報酬を変換する義務も発生するのです。

保険者に対して診療報酬の請求ができないため、保険診療自体ができなくなります。取り消し処分は争うことが可能なものの、何年もかけて訴訟していく必要があります。訴訟している期間は保険診療ができないため、経営にも大きな影響が出るのです。

個別指導によって取り消し処分になり得る4つの理由

取り消し処分が発生するのは4つの理由があります。

  • 架空請求
  • 付増請求
  • 振替請求
  • 二重請求

架空請求

架空請求とは、実際におこなっていない診療の請求をおこなっているときをさします。レセプトとカルテの内容を照合し、実際におこなった診療と診療報酬の請求におかしい部分がないかを確認します。

また、現金の動きとも照合し、虚偽の報告がないかを確認しているのです。

付増請求

付増請求とは、診療回数や薬剤の数量、診療内容を実際よりも多く請求することをさします。レセプトとカルテを照合し、明らかにおかしい薬剤の量や通院回数がないかを確認しています。

振替請求

振替請求は、おこなった保険診療よりも保険点数が高い別の診療内容に振り替えて請求することです。カルテ上の治療計画や処方している薬剤が患者様に対して適切な内容であるかチェックがおこなわれます。

二重請求

医療機関が個別指導を受けた場合は、監査につながらないようしっかり対策しましょう。ここからは、医療機関が個別指導を受けたときの注意点を5つ解説します。

  • 間違いは素直に認めて改善する
  • 指定された持ち物を持参する
  • 感情的にならずに対応する
  • 意図して不正請求をおこなっていないと伝える
  • 個別指導を拒否しない

間違いは素直に認めて改善する

個別指導の結果不備や間違いが指摘された場合は、素直に認めて改善を約束しましょう。不正をするつもりがなくても、忙しい日々の中で診療録を記載していると、保険診療のルールに適さない形で記載される場合もあるでしょう。

誤りがあったからといって、すぐに自主返還を求められたり、監査につながったりするわけではありません。間違いがあるにもかかわらず改善の姿勢がないと、再指導となる危険もあるのです。

指定された持ち物を持参する

個別指導を実施するときは、事前に必要な持ち物を指定されます。忘れ物があると個別指導がやりなおしになる場合もあるため、忙しい中で何度も指導を受けなければなりません。

指示されたカルテを電子で管理している場合は、プリントアウトして持参することも必要です。個別指導日の前にカルテの内容を追記すると不正が疑われるため、おこなわないよう注意しましょう。

感情的にならずに対応する

個別指導時に不備や誤りが見つかっても、感情的な対応は避けましょう。感情的な対応をすれば「改善の見込みが低い」と判断され、再指導を指示される可能性があります。

真面目に診療をおこなっているつもりで不正請求を疑われれば不満を感じる気持ちもわかりますが、個別指導はあくまで保険診療のルールを周知する目的でおこなわれているのです。

そのため、誤った診療報酬の請求があれば、指摘しなければならないのです。個別指導で見つかった間違いや不備は今後に活かすことで、次回以降の個別指導を回避できる確率が高まります。

意図して不正請求をおこなっていないと伝える

個別指導を進める中で、不正請求の意図を確認される場合があったら、意図していない旨を伝えましょう。

万が一請求内容に誤りがあっても、不正請求の意図がなければ今後改善が可能です。不正請求を意図的におこなったわけではない旨を伝え、改善の意思を伝えましょう。 個別指導時に不正請求の意図があったと判断されれば監査につながるため、十分に注意してください。

個別指導を拒否しない

個別指導の対象医療機関となった場合には、拒否しないようにしましょう。個別指導を拒否すると監査がおこなわれるため、万が一間違いが見つかった場合に改善できるチャンスがなくなってしまいます。 意図的な不正や不当な請求をおこなっていないのであれば、指示通り個別指導を受けましょう。

医療機関に個別指導が入った場合は落ち着いて対応

医療機関にとって個別指導は、保険診療の正しいルールを学ぶ場でもあります。

個別指導前に対策をおこなうのではなく、日々医療に詳しい専門家のサポートを受けることで、個別指導を回避できます。また、医療法人の場合であれば、医療法人に詳しい専門家に関与してもらうことも重要です。さらに、万が一個別指導が入っても、落ち着いて対応することが大切です。日々の業務で請求内容の管理を徹底し、個別指導を減らしましょう。

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この記事の監修者 
特定行政書士 宗方 健宏

行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。障害福祉事業所と医療法人は、設立~運営までサポートしております。障害福祉事業所は、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。