令和6年4月より、障害福祉サービス等報酬が改正されます。障害者が希望する地域生活が送れるよう、様々な整備がなされます。本記事では、障害福祉サービスの横断的な報酬改定の見直しや、新たに創設された加算などについてポイントを解説します。
処遇加算体制の見直し
人員不足が問題とされている障害福祉サービスにおいて、以下の見直しを行います。
①処遇改善加算の一元化
現行の処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算が「福祉・介護職員等処遇改善加算」へ一本化されます。以下のような4段階に分かれ、福祉・介護職員の経験値の高さを加算で評価します。(令和6年6月1日施行)
出典:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
②加算率の引き上げ
各サービスの加算率については以下の通りです。
出典:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
地域生活支援拠点等の機能
障害者の重度化や親亡き後でも安心した地域生活が送れるよう、以下の加算が新設されます。
地域生活支援拠点等機能強化加算の新設
市町村や基幹相談支援センター、事業所などとの情報連携を担う拠点コーディネーターの配置について加算されます。(500単位/月)
緊急時受入加算の新設
通所系サービス事業所において、障害特性上の緊急時の受け入れの際、夜間に支援を行った場合に加算されます。(100単位/日)
緊急時対応加算の見直し
地域生活支援拠点等に位置づけられた事業所において、関係機関との連絡調整に従事する者が配置されている場合に加算されます。(50単位/回)
強度行動障害のある障害者の支援体制を充実化
専門性のある職員による支援を要する強度行動障害の障害者について、以下のとおり支援体制の整備がなされます。
重度障害者支援加算の拡充
行動関連項目が18点以上の障害者の受け入れや、中核的人材による個別支援について加算されます。
出典:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
集中的支援加算の新設
高い専門性を持つ広域的支援人材による事業所への訪問(1000単位/回)、状態が悪化した強度行動障害者の受け入れ(500単位/日)について加算で評価されます。
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算の拡充
視覚・聴覚・言語障害者を多く受け入れ、専門性のある職員配置の多い事業所について、より高く評価されます。(51単位/日)
意思決定支援の推進
サービス担当者会議などにおいて、可能な限り本人が参加し、自己決定を尊重できるよう配慮することが基準となります。
出典:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
本人の意向を踏まえたサービス提供(同性介助)
本人の意思に反する異性による介助が行われないよう、サービス管理責任者による本人の意向の把握やサービス提供体制の確保について、指定基準の解釈通知に明記しなければなりません。
虐待防止と身体拘束についての減算
令和4年度から義務付けられた虐待防止措置や身体拘束廃止について、適正な措置がなされていない場合、以下のような減算が課されます。
虐待防止措置未実施減算の新設
虐待防止措置について実施していない事業所に対し、所定単位数の1%が減算されます。
身体拘束廃止未実施減算の見直し
身体拘束廃止について未実施の事業所については、以下のようにサービス形態に分かれて減算額が設けられています。
サービス形態 | 減算額 |
施設・居住系 | 所定単位数の10% |
訪問・通所系 | 所定単位数の1% |
高次脳機能障害支援の報酬を評価
高次脳機能障害のある障害者の支援事業所について、以下の加算が新たに設けられます。
高次脳機能障害支援体制加算の新設
専門の研修を受講した相談支援専門員の配置と相談支援が行われた場合に、1日につき60単位が加算、配置について公表した場合には、1日につき30単位が加算されます。
高次脳機能障害者支援体制加算の新設
高次脳機能障害を有する利用者が全体利用者の30%以上の事業所で、専門研修を終了した職員が50:1以上配置され、その旨を公表した場合に評価されます。(41単位/日)
育児・介護休業への配慮
育児や介護で短時間勤務を利用する職員へ、定着促進を図ります。
「治療と仕事の両立ガイドライ ン」に基づき、短時間勤務制度等を利用する場合において、週30時間以上の勤務を「常勤」として扱い、常勤換算方法の計算においても1(常勤)と扱うことが認められます。
障害福祉現場の業務効率化
福祉現場における様々な業務のうち、ICTの活用などにより効率化を図るため、以下のよう効率化が図られます。
緊急時対応の責任者兼務の柔軟性
緊急時の管理者の責務について、同一の敷地内に限らず同じ事業所内であれば、他事業所の管理者や従業者の兼務が出来るようになります。
テレワークの活用
利用者の処遇に支障が生じない事を前提として、テレワーク導入が可能になります。緊急時の対応についてあらかじめ定め、適切に連絡がとれるなどの体制確保が前提条件となります。
標準様式・標準添付書類の作成
事務手続きの各種様式の複雑さをなくすため、サービス類型ごとの標準様式が作成されます。電子的な申請や届出ができるようシステム整備が行われます。
業務継続計画未策定減算の新設
感染症や災害時のサービス継続について、業務継続計画策定がなされていない事業所は、基本報酬から減算されます。一定の取り組みを行っている事業所については経過措置となります。
サービス形態 | 減算額 |
施設・居住系 | 所定単位数の3% |
訪問・通所系 | 所定単位数の1% |
医療機関との連携強化・感染症対応力の向上
障害者支援施設などにおいて、日頃より医療機関との連携を図り、新たな感染症への対応力を高める取り組みに努めなければなりません。
運営基準の新設
感染症発生時の対応として第二種協定指定医療機関との取り決めの努力義務が求められます。第二種協定指定医療機関が協力医療機関である場合は義務付けとなります。
障害者支援施設等感染対策向上加算の新設
感染発症時の体制確保・協力医療機関との連携・院内感染対策研修の参加により加算されます。(10単位/月)
医療機関による3年に1回以上の実地指導を受けた場合に加算されます。(5単位/月)
新興感染症等施設療養加算の新設
新興感染症の発生時に、施設内療養を行った入所施設へ加算されます。(240単位/日)
情報公表未報告減算の新設
利用者への情報公表や、災害時の迅速な情報共有、財務状況の見える化促進のための情報公表を行っていない事業所に対し減算されます。
サービス形態 | 減算額 |
施設・居住系 | 所定単位数の10% |
訪問・通所系 | 所定単位数の5% |
物価高騰における補足給付の見直し
入所施設に暮らす所得の低い利用者に対して、下図のように補足給付が支給されています。今般の物価高騰に対応するため、基準費用額について現行の54,000円から55,500円へ見直されます。
出典:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
食事提供加算の見直し
通所系サービスにおける食事提供加算について、栄養面への配慮が追加されます。
以下3つの要件を全て満たした場合において加算されます。(通所系:30単位/日 短期入所・宿泊型自立訓練:48単位/日)
- 管理栄養士や栄養士の関わった献立作成である
- 利用者ごとの摂食量の記録
- 利用者ごとの体重やBMIの記録(約半年に1回)
報酬改定される障害福祉サービス
本記事では、令和6年度から報酬改定される障害福祉サービスのうち、全体における横断的な改定部分について解説しました。
今回の報酬改定により、
- 障害者の意思を尊重し、支援の質の向上
- 社会変化の中でも障害者が安心して暮らせる環境整備
- 経験や専門性のある職員を安定的に確保するための処遇改善
など、障害福祉サービス全体において多くのことが期待されます。
この記事の監修者 特定行政書士 宗方 健宏 行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。障害福祉事業所と医療法人は、設立~運営までサポートしております。障害福祉事業所は、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。 |