令和6年4月より、障害福祉サービス等報酬が改正されます。本人の希望する地域生活の実現へ向けて、どのような整備がなされていくのか注目されます。本記事では、介護給付に係るサービスについて、改定事項のポイントを解説します。

居宅介護

自宅で安心して生活できるよう、サービス管理責任者の有資格化や、実際のニーズに沿った通院支援の評価について、以下のとおり改定されます。

サービス管理責任者についての暫定措置の廃止

サービス管理責任者の介護福祉士の資格取得等の促進を図るべく、段階的な廃止へ向けて見直されていたものが廃止となりました。設けられていた減算においても廃止となります。

通院等介助の対象に関する見直し

通院介助において、病院受診後に生活介護を利用したいケースなど、複数の目的地がある場合の支援も加算の対象となります。

出典:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容より

重度訪問介護

熟練職員による同行支援に関する見直し、高齢化などにより必須となる入院に関する事項について、改定が行われます。

入院中の対象区分の拡大

支援区分6に限らず、特別なコミュニケーションが必要である重度障害者についても加算の対象となるよう、該当利用者が区分4まで拡大されます。

入院時支援連携加算の新設

入院前に医療機関と事前調整を行った場合、1回を限度として加算されます。(300単位/回)

熟練従業者による同行支援の評価

新任従業者による支援の際に、熟練従業者の同行に対する評価の割合が上がります。(現行85%から90%へ見直し)

採用から6カ月以内の者のみを新任従業者とせず、専門的な支援を初めて行う者についても評価の対象とします。

同行援護

視覚障害者への専門的な支援提供を図るため、盲ろう者向け通訳・介助員で、同行援護従業者の要件を満たしている人材の割合が20%以上配置されることが追加されます。

行動援護

サービス提供の実態やニーズに合った支援の評価が行われるよう、以下の点が改定となります。

短時間支援の評価

在宅での暮らしに欠かせない行動援護の報酬単位において、利用者のニーズの高い短時間利用については評価され、ニーズの低い長時間については見直されます。

特定事業所加算の見直し

医療や教育機関との連携、中核的人材育成研修を修了した職員の配置、行動関連項目をもとにした必要な支援の明確化により、ニーズに見合った質の高いサービス提供に繋げます。

重度障害者等包括支援

有資格者による質の高いサービス提供や、障害者の高齢化などを見据えた対策など、以下のような改定がなされます。

強度行動障害のある利用者への支援の強化

必要な資格のある職員が支援を行った場合、有資格者支援加算で評価されます。(60単位/日)

また、外部の各事業所と連携した包括的な支援について、外部連携支援加算として新たに評価されます。(200単位/回)

訪問系サービスの国庫負担基準の見直し

障害者の高齢化などに対応できるよう、居宅介護の国庫負担基準に介護保険対象者が追加されます。

重度訪問介護利用者について、介護保険対象者が区分4〜6へ細分化され、区分によって異なる支援への評価が可能になります。

生活介護

サービス提供の実情に見合った基本報酬、医療的ケアや栄養面などの専門的な支援への評価のため、様々な改定が行われます。

基本報酬の設定見直し

支援の実態が適切に報酬へ反映されるよう、サービス提供時間別に細かく設定されます。

これまで併給できなかった福祉職員配置等加算(Ⅲ)についても、(Ⅰ)や(Ⅱ)との併給が可能になり、勤続年数の長い職員が評価されます。

出典:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容より

地域移行の促進や、小規模事業所の運営のしやすさの観点から、利用定員ごとの基本報酬を10人ごとに細かく評価します。

延長支援加算の見直し

基本報酬がサービス提供時間別に設定されたことに応じ、9時間から12時間以上の延長支援について、1時間ごとに加算が設定されます。

常勤の看護職員等配置加算の拡充

常勤看護職員の配置加算について、利用定員5人以下、6~10人以下について細かい設定が加わり、より少人数への支援の評価を図ります。

人員配置体制加算の拡充

重度障害者への手厚い体制を評価するため、常勤換算方式で「1.5:1」以上の職員を配置している場合において、単位数が上がります。

利用定員が少数で、より手厚く人員を配置している事業所について評価されます。

医療的ケアを要する支援への加算新設

入浴支援加算(80単位/日)や喀痰吸引等実施加算(30単位/日)の新設により、医療的ケアが必要な障害者や、重症心身障害者への専門的な支援について評価されます。

言語聴覚士の人員配置

高次脳機能障害等の後遺症(言語障害)により必要となる、専門的な支援提供を図るため、配置基準に言語聴覚士が追加されます。

栄養ケア・マネジメントへの加算の新設

6カ月ごとの利用者の栄養状態の確認、相談支援専門員への情報提供が行われた場合、栄養スクリーニング加算により評価されます。(5単位/回)

栄養改善の取組として、管理栄養士の1名以上の配置、栄養ケア計画の策定と定期的な評価、栄養状態の定期的な記録を行った事業所について、栄養改善加算が算定されます。(200単位/回)

短期入所

地域生活支援拠点等との連携強化や、新たな日中サービス類型の創設など、以下の改定が行われます。

緊急時の受入機能の充実

地域生活支援拠点等との情報連携の促進のため、市町村や基幹相談支援センターなどとの連携に従事する者の配置が1以上ある場合、現行の加算に200単位が追加されます。

緊急短期入所受入加算については、以下のとおり大幅な見直しが行われます。

 現行見直し
緊急短期入所受入加算(Ⅰ)180単位/日270単位/日
緊急短期入所受入加算(Ⅱ)270単位/日500単位/日

福祉型強化短期入所サービス費の日中支援サービス類型の創設

 医療的ケアが必要な障害者への入浴支援など、日中のみの支援ニーズに対応するサービス類型が新たに創設されます。

医療的ケア児者の受入体制の拡充

看護職員の配置が必要数以上配置された事業所での短期入所において、医療的ケア対応支援加算で評価されます。(120単位/日)

区分5・6の利用者が、全体の50%以上である場合に、重度障害児・障害者対応支援加算にて評価されます。(30単位/日)

医療型短期入所の受入前支援加算の新設

喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアの手技について、利用の前日までに確認を行った場合に加算されます。加算額については以下のように、確認手段ごとに異なります。

  • 自宅訪問 1000単位/日
  • テレビ電話等 500単位/日

施設入所支援

地域移行へ向けての環境整備、障害者の高齢化などに対応できる医療面の強化が、以下の改定事項に盛り込まれています。

基本報酬の定員区分を10人ごとに設定

20人ごとの定員区分を10人ごとに見直されることにより、地域移行に伴う利用定員の変更に対処しやすくなります。

出典:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容より

運営基準の見直し

地域移行促進のため、地域生活への意向確認や、その業務担当者の選任が必要となりました。

グループホームの見学など、地域移行に関する支援が行われた場合に、地域移行促進加算として評価されます。(60単位/日)

地域移行等意向確認等に関する指針が未作成等の場合、減算の対象となります。(5単位/日)

地域移行支援体制加算の新設

前年度に地域移行を行った施設について、入所定員を1名以上減らした場合に加算されます。

夜間看護体制加算の拡充

夜間の医療的ケアについて、生活支援員の代わりに看護職員を複数配置した場合に算定されます。(35単位×看護職員数/日)

通院支援加算の新設

医療的ケアを要する入所者の、通院頻度の高まりに対応するため、1カ月に2回を限度として加算が受けられます。(17単位/回)

見守り機器導入による夜勤職員配置の要件緩和

入所者数の15%以上の見守り支援機器導入により、夜勤職員の配置数が緩和されます。

 現行見直し
前年度の利用者数21~40人以下夜勤2人夜勤1.9人
前年度の利用者数41~60人以下夜勤3人夜勤2.9人

介護給付に係るサービスの改定

本記事では、介護給付に係るサービスの改定について解説しました。

今回の改定のポイントとして、

  • 障害者の高齢化などに対応できる仕組みづくり
  • 専門職員の適切な評価
  • サービス実態に基づく適切な報酬の見直し

が挙げられます。

これらの改善により、本人の希望した地域生活の実現へ向けて、しっかりした土台整備が期待されます。

この記事の監修者 
特定行政書士 宗方 健宏

行政書士国際福祉事務所は、障害福祉医療・外国人ビザの許認可手続きに特化しております。障害福祉医療業務・国際業務に特化しておりますので、様々な事例に対応してきました。障害福祉事業所と医療法人は、設立~運営までサポートしております。障害福祉事業所は、毎月の国保連請求代行業務(株式会社IWパートナーズ)や行政による実地指導の立会いまでサポートしております。国際業務は、障害福祉事業所・医療法人・企業で外国人を雇用したい法人様をサポートしております。